愛のお荷物

6.3/10
合計12件のレビュー
ジャンル   プロット
ランタイム   110分
言語   日本語
地区   日本
書かれた   柳沢類寿
劇場で   03月18日 1955
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愛のお荷物 プロット

「お月様には悪いけど」の柳沢類寿と「昨日と明日の間」の川島雄三が共同で脚本を書き、川島雄三が監督に当る。撮影は「月は上りぬ」の峰重義、音楽は「女の一生(1955)」の黛敏郎。出演者は「美男お小姓
人斬り彦斎」の山村聡、轟夕起子、「月は上りぬ」の北原三枝、笠智衆、「億万長者(1954)」の山田五十鈴、「地獄への復讐」の三橋達也の外、坪内美子、東野英治郎、フランキー堺などである。

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愛のお荷物コメント(2)

Ikopngmssxh
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名家に起こる、名家らしからぬ平凡さゆえ切実になってしまう問題を作品の骨組みにした時点で目に新しいが、それが川島節のテンポの喜劇でやるのだから、それはたのしい。
皮肉家精神で描くと、社会風刺に終始してしまいがちであろうが、本作、デリカシーが求められるテーマもある。タイトルからして、現代では必ず物言いがつきそうなわけだが、当時の情勢を鑑みても尚、お洒落な川島雄三がヤボに陥ることはなかった。
縦横無尽にカメラが飛び回り、物語とセリフが空転がちに駆け巡ってドタバタ、だけど切実なところを守りきって、社会風刺がテーマ、と敢えて捉え違えてみても、粋な作品にまとまっている。
川島雄三特有の、大きな視点から細部へテンポよく入って行く、構成が光っている。
また、演出の使い分けが、小まわりが効いている。ギャグのアホらしさとピリッと舌先に滲みる哀愁と、権力主義者の浅ましさはしっかりと浅ましく描いて強烈。

この作風は直弟子・今村昌平は無論だが、現代では原田眞人に受け継がれているように思える。
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産児制限を政策に掲げる政治家の一家に巻き起こる、望まれぬ妊娠から始まる喜劇を川島雄三が撮った作品。
出てくる女性キャストがことごとく妊娠するのだが、川島はこの女たちをとても美しく撮っている。なかでも北原三枝の美しさは群を抜いており、大げさではなく八頭身で仕事のできるキャリアウーマンを体現している。2010年代の○○ヒルズで働いていても、少しの不自然もないだろう。
若手の女優ばかりではなく、孫ができるというのに自身も子供を身ごもる轟夕起子も美しい。同じ川島作品の「洲崎パラダイス 赤信号」では赤線の入り口で一杯飲み屋を営むくたびれた女将を演じていたが、同じ人とは思えぬほどの美しさと色香を湛えている。特に、大使館のパーティーで夫婦でダンスするシーンの彼女は上流階級の夫人の品格と色気がみなぎっている。このシーンによって、その夜がこの妊娠の元となることに観客は納得するのである。
様々な中年女性を演じ分けられる轟も素晴らしいが、それを引き出す演出の川島もさすがである。彼が女優の魅力を引き出した作品としては、若尾文子の「しとやかな獣」と並ぶ作品ではないだろうか。
フランキー堺の脇役に徹した仕事ぶりや、東野英二郎の病人のふりなど面白い点は挙げればきりがないが、しかし、この作品の底に流れる川島雄三らしい社会風刺は辛辣である。
少子化が進んで人口が減り始めることなどこの時代の人々は想像していただろうか。このような社会も、川島の可能性の中にはあったのではなかろうか。子供が生まれるという出来事は、社会や国家の要請から起きるものではなく、一組の男と女の、はなはだ個人的な事情によって現実化するのである。その社会的現実を突き放して見ることのできる川島にとっては、男と女の身勝手で子供を産まなくなる社会の到来は、「アメリカからもってきた避妊薬」の登場によってしっかりと言及されているのだ。

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