仁義なき戦い

何をコメントしても陳腐になる。俳優陣の熱が凄くて圧倒される。

今にも通じる仁義を感じさせる本作
太平洋戦争終結後の混沌とした場面から始まり、高度経済成長まで駆け抜ける
テンポよく進んで行くところに娯楽作の特徴が良く出ており、飽きさせない構成は素晴らしい
金、暴力、女
三要素が絡み合う中で、仁義とは何か主張する
今でも、このメッセージが通じる世の中であることは恥じるべきなのかもしれない

深作欣二監督と笠原和夫氏の黄金コンビと東映最強の俳優陣らによって、日本映画史に風穴を開けた革命的な伝説のヤクザ映画。

笠原和夫氏の先の読めない巧妙な脚本、深作欣二監督の生々しい程に鮮烈でリアリティの溢れる暴力的な描写。このふたりの持ち味は驚く程に相性が良い。コンビを組んだどの作品においても最高の化学反応を魅せてくれる。本シリーズはその黄金コンビが手掛けた作品の中でも最も至極の化学反応を魅せてくれる(完結編はこのコンビではないが素晴らしい内容)。やくざ映画史の最高傑作であることは間違いないし、日本映画史の中でも今尚最高峰に君臨し続けている歴史的な大傑作だと思う。

そんな傑作シリーズの記念すべき第1作目は、やくざ映画史の流れを1発で劇的に変えた革命的な大傑作である。それまで主流だった任侠映画にあった仁義や義理人情といったカッコ良いやくざ像は撃ち砕かれ、任侠のカケラも無い私利私欲に満ち溢れた卑劣でドス黒いヤクザ像が姿を表す。それまであった夢や理想は無残にも砕け散り、暴力的なリアリティが容赦なく銀幕を支配する。本作はこの様に停滞した主流を容赦なくぶった斬り、飽和状態のマンネリ化したやくざ映画界に革命を起こしたアバンギャルドな大傑作である。「弾はまだ残っとるがよう」と言った通り、その後に4発の続編を撃ち込んで、やくざ映画の滞った流れに完全にトドメを刺した。深作監督の凄さを心底感じる。

しかしただ単に主流を断ち切っただけではこれ程までの歴史的で世界的な評価は得られていなかっただろう。本作の本当の凄さはその主流をぶった斬った上に、新たに提示した路線の最初の一歩であるにも関わらずに、既に最高地点に到達しており究極のクオリティまで達しているところだ。実録やくざ路線の原点であり頂点。深作監督と笠原氏の至極の化学反応ここにあり。全く先の読めない巧妙なストーリー展開。相手の腹を探り合ったり騙し合ったりと、嘘と本音が交錯する緊迫感漂う人間関係に圧倒される。数々の名台詞も本作を語る上では欠かせなく、後にも先にもこれ程までに強烈なインパクトのある名台詞に溢れたやくざ映画は観たことがない。名ナレーションも同じく。そしてただ単にシリアスなリアリティで終わらせないのが深作監督×笠原氏の黄金コンビ。そこには一捻りもふた捻りもあるブラックなコメディのスパイスが所々に散りばめられている。これだけシリアスなテーマなのに所々で笑える。これを傑作と呼ばずして何と呼ぶのだろう。笑 笠原氏の脚本の凄さを感じる。そこに深作監督のお家芸である臨場感溢れるカメラワークなど、生々しい程に鮮烈でリアリティのある暴力的な演出が炸裂する。恐ろしい程に傑作である。

しかしそれだけでは大傑作とまではいかない。本作が大傑作と呼ばれる決定的な決め手は、他でもなく東映俳優陣の圧倒的な熱量の名演技だろう。主要キャストから脇役そして端役まで、ひたすらほとばしる凄まじい熱量。鳥肌が立つ程の圧巻の演技はもはや感動さえする。この名演技を観る為だけに観たとしても十分な価値があるくらい。撮影時は監督、スタッフ、キャスト共に撮影が終わると毎晩の様に夜の街に繰り出し、朝までドンチャン騒ぎを楽しみ、二日酔いの状態で撮影をしていたというのも驚きの逸話。

この様に脚本と演出、それに加えて演技も爆発的な化学反応を魅せ、三位一体の極意で途轍もない大傑作になった。

演出面をもう少し掘り下げると、津島利章氏の音楽の素晴らしさも欠かすことは出来ない。あの超有名なテーマ曲は勿論、他の曲も素晴らしいインパクトとカッコ良さで一度聴いたら忘れられない。サントラも物凄くオススメ。近年発売された五部作のサントラコレクションも買ってしまった笑 重厚な内容で素晴らしかった。

映画館やDVD、Blu-rayで何度も何度も観返してきたシリーズだが、このシリーズは観返す度に面白さが増していっている。複雑で巧妙なストーリーへの理解が深まっていき、噛めば噛むほど味の出る最高級のスルメ映画なんだと確信。何度も声を大にして言うが、とんでもなく大傑作。笑 シリーズ5作品をまとめてひとつの作品として捉えると間違えなく1番好きな映画。本作単体としても私的映画ランキングベスト5に入る。2014年の「午前十時の映画祭」で大スクリーンで観ることが出来たのは感無量な思い出。

登場人物が多すぎ。
原作を読んでいるのが前提。
話がさっぱり理解できない。

モブシーンが多すぎ。
ゴッドファーザーPart1が前年の1972年。
パクろうとしたんだろうけど。

アップが多すぎ。
カメラワークがTVレベルで、映画的センスがない。

あと細かいけど、役者の肌が綺麗すぎ。
ヤクザはメイクしてないでしょ。

ヤクザ映画というと今となっては、B級映画のそれでしかないけど、この映画はホンモノ。
広島で実際に起きた抗争を描く。原作の元になったのは、この映画の主人公のモデルでもあるモノホンのヤクザであり、実録物の走りとなった映画でもある。
暴力でしか生きていけない人々の中で、無残にも散って行く若者の命。そして、老人だけが生き残る不合理。
やくざものでありながら、この社会の不合理まで描く超傑作。
菅原文太、松方弘樹、田中邦衛、渡瀬恒彦、など名優が揃っていて、とてつもないクオリティの映画となっている。ヤクザのやってることは、他人に迷惑かけまくりな悪そのものでありながらも、男として少し憧れる格好良さがある。ただ、無残にも殺され、呆気なさ、虚しさを感じる。
中でも、金子信雄の演技がこの映画のキモ中のキモ。このシリーズを通して、こいつが生き残って他が死んで行くことに対する不条理が、この映画の全てである。