「孤狼の血」の白石和彌監督が、香取慎吾を主演に迎えて描くヒューマンサスペンス。「クライマーズ・ハイ」の加藤正人が脚本を手がけ、人生につまずき落ちぶれた男の喪失と再生を描く。無為な毎日を送っていた木野本郁男は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓と彼女の娘・美波とともに亜弓の故郷である石巻に移り住むことに。亜弓の父・勝美は末期がんに冒されながらも漁師を続けており、近所に住む小野寺が世話を焼いていた。人懐っこい小野寺に誘われて飲みに出かけた郁男は、泥酔している中学教師・村上と出会う。彼は亜弓の元夫で、美波の父親だった。ある日、美波は亜弓と衝突して家を飛び出す。亜弓は夜になっても帰って来ない美波を心配してパニックに陥り、激しく罵られた郁男は彼女を車から降ろしてひとりで捜すよう突き放す。その夜遅く、亜弓は遺体となって発見され……。「くちびるに歌を」の恒松祐里が美波、「ナビィの恋」の西田尚美が亜弓、「万引き家族」のリリー・フランキーが小野寺を演じる。
凪待ちコメント(20)
年に2~3本の多作家となり、時々作品にムラが出るようになった白石和彌監督。
でも、劇中のギャンブルさながら当たる時は当たる。こちらは当たりの方。
非常に心揺さぶられた!
稼いだ金は競輪へと消える極度のギャンブル依存症の郁男。
足を洗う事を決め、恋人の亜弓とその娘・美波と共に、亜弓の故郷・石巻へ。石巻で暮らす亜弓の父・勝美は漁師をしているが、末期のガンであり…。
勝美の世話してくれている親切な小野寺の紹介で、印刷所で働く事になったのだが…。
印刷所の同僚に誘われ、再びギャンブル。
そんな時、遊びに行った美波が夜遅くになっても帰って来ない。
一緒に捜すが、ヒステリック状態の亜弓と口論に。ギャンブルの事にも触れられ、ついカッとなり、「車を降りろ!」。
無事美波は見つけるが、しかしその直後、亜弓が殺されて発見され…。
白石監督と言えば、サスペンスやバイオレンスの名手。
が、それを期待すると本作は少々肩透かしを食らうだろう。
怪しい人物は何人か浮上するが、犯人は何となく察しが付く。犯人捜しのミステリーや動機も全く語られない。(ある程度予想は出来るが)
本作はサスペンスというより、悲しみ苦しみの骨太なヒューマン・ドラマ。
突然の大切な人の死。
自分のせいだと責める美波。自分が母親と喧嘩し、心配させてやろうと連絡しなかったから…。
勝美も重い口は開かないが、思っているに違いない。自分のガンのせいで娘が帰って来たから…。
でも誰よりも罪の意識を背負っているのは、郁男。
自分があの時、あんな事を言わなければ…。
最も許し難いのは犯人だが、自分にも責任がある。
その事で美波に激しく責められる。
警察からは犯人と疑われる。
職場でも怪訝の目。さらには職場で金が消え、それをギャンブルに使っているとまで…。
この新天地で人生をやり直そうと決めたのに、全てが悪い方向へ…。
さらに悪くしているのは、郁男がこの期に及んでもギャンブルから抜け出せないでいる事。
もはや悲しみから逃れる為…ってもんじゃない。
亜弓のヘソクリを見つけ、賭博場を仕切ってる地元ヤクザから借金をし、強いては絶対にギャンブルなどに使ってはいけない大事な金まで…。
ここまで来ると、異常な病気。
ギャンブルを一切やらない自分には到底理解出来ない。何故こんなにも底無し沼に堕ちていく…?
それは依存症の恐ろしさが分かってない単なる楽観的で傍観者的な考えなのかもしれない。
よくTVなどで依存症の恐ろしさを聞くが、依存症になってしまったら、もう自分一人の力ではどうする事も出来ないのだ。
郁男は何度もギャンブルを断ち切る機会があった。
しかしその度に…。
ギャンブルで失ったものをギャンブルで取り戻そうとする。
それって、借金を借金で返そうとするのと同じ生き地獄。
郁男は自分自身がろくでなしのクズでバカで、どんなに罵られても仕方ない人間である事を充分分かっている。
大抵なら中盤辺りで本当に自分自身を見つめ直し、更正しようとするのだが、郁男は…。
こんな自分などのたれ死ぬべき。
一緒に居たら必ず不幸にする。
去る…いや、逃げ出す。
何もかも捨て去ろうとする。
再出発のチャンスを何度も自らの愚かな行いのせいで棒に振ってきた郁男。
しかし最後の最後、本当に人生をやり直せる救いの手が差し伸べられる。
それはあの人ではなく、“身内”であってやはり良かった。
その救いと郁男の嗚咽に、もう二度と自分自身と“身内”を裏切る事はしないと信じたい。
香取慎吾と言えば今でも少年のような明るさと人懐っこさの代名詞的な人物。
そのイメージを覆す、ダークでシリアスな熱演!
ギャンブルから抜け出せない闇、悲しみ苦しみ、暴力的な一面もあり、自暴自棄になって酔っ払って祭りで大暴れ…。
新境地開拓!…というより、元々これほどの実力あったのだ。間違いなく、キャリアベスト!
西田尚美、音尾琢真、リリー・フランキーら実力派が各々喜怒哀楽を体現。
その他脇にも悲哀を抱えた印象残る登場人物が。特に、郁男のギャンブル仲間のナベさん。
キャストで特筆すべきは、この二人。
まず、美波役の恒松祐里。郁男とは良好な関係だが、実の親子ではない。よって母の死後、一緒に暮らせない。祖父もガンを患っている。DVの実の父の元に戻るしかない…。唯一の安らぎは、幼馴染みの青年との他愛ない交流…。郁男も郁男で抱えているものあるが、美波も然り。
そして、勝美役の吉澤健。香取も素晴らしかったが、このベテランこそ本作のMVP!
口数少なく、頑固で、画に描いたようは堅物。
でも決して根っからの気難しいじいさんって訳じゃなく、不器用な優しさを見せる。
普通ならギャンブル狂いの娘の恋人なんて、別れろ!出ていけ!…と言う。
が、勝美は郁男に対し罵るような事は言わない。何故か…? 実は自分もかつて、郁男と同じだったから…。
ろくでなしのクズだったが、女房と出会って、やっとまともな人間になれた。
人は必ず再起出来る。郁男を信じ、決して見捨てず、自分の船を売って作った金を渡してまで。
あるシーンの「オイのせがれだ」。
またあるシーンの「償ってくれ」。
とにかくこの人に何度感動させられた事か!
さらには地元ヤクザの親分の恩人で、一人で出向いて郁男の窮地を救う。
しびれる漢っぷりまで!
本作で毎日映画コンクール助演男優賞を受賞。2019年度の国内助演男優賞は『愛がなんだ』『さよならくちびる』などの成田凌推しだったが、ちょっと考え直したいほど。
サスペンスやバイオレンスとは違う、白石監督の重厚なドラマ演出も素晴らしい。
『孤狼の血』『凶悪』『彼女がその名を知らない鳥たち』『止められるか、俺たちを』と並んで、また一つお気に入りの白石作品が。
次は『ひとよ』に期待!
勝美の台詞で、「津波が新しい海を作る」というのがあった。
本作の舞台は津波被害が酷かった石巻。
津波で全てを失った方々は大勢おり、この台詞は引っ掛かり、受け止め方も人それぞれだろう。
が、荒波の後に海は再び穏やかになるというのは聞いた事がある。
津波被害とは切り離して受け止めたい。
タイトルの意味は、風が止み、波が無くなり、海が再び穏やかになる事。
荒波のようだった郁男のこれまでの人生。
過ぎ去り、今度こそ新たな人生に確かな船を出してーーー。
後半グングン良くなる。
見ごたえありました。
(西田尚美さんと深津絵里さんの区別が…)
香取慎吾の顔の疲れが素晴らしく、体もでかいしほどほどにだらしなく、ダメなやつを体現してる感じが良かったです。
犯人の正体はちょっと納得できませんでした。
が、それはどうでもいいですかね。
冒頭、くたびれた服とぼさぼさの髪で自転車を漕ぐ男性。香取慎吾さんの見事な役作りは、このずんぐりした背中だけで十二分に伝わってきます。終始気だるそうにしていて、家族や観客を苛立たせる演技も見事。ただ時々、妙に張りのある美声を出してしまうところに、香取さんの隠しきれない地金がのぞきます。
ギャンブル依存症気味な香取さん(が演じる男性)が婚約者と人生をやり直そうとするところから物語は始まりますが、そんな簡単に長年染みついた習慣が改まるはずはなく、様々な困難が彼と彼の親しい人に降りかかることになります。そして物語中盤、決定的な事件が。
「過ちを抱えたまま生きていく」という主題は、近年多くの作品で見られますが、本作で主人公が乗り越えるべき壁は相当に残酷で、ケイシー・アフレック主演の某作品に匹敵する険しさです(あえて作品名は秘匿)。また自滅的な選択と抗いがたい運命に押し流される…、という主題から鑑賞中度々伊集院静著『でく』(1996)を想起しました。両作ともギャンブル依存症という点でも共通しており、何か影響があったのかも。
面白かったのは劇中音楽で、時々妙にコミカルだったり、場面と全く噛み合っていなかったりします。これは恐らく意図的な演出なんでしょうが、それで「笑いたいけど笑っちゃいけないような気がする」という微妙な気持ちを味わえます。
物語の背景の一つだった東日本大震災が突如前景となるエンドクレジットは非常に素晴らしく、これを見ずして席を立つのは非常に惜しいです。一番最初に映し出されるあるものに、個人的には非常に衝撃的かつ意表を突かれて、思わず座席から身を乗り出しました。
震災後、東日本に生きる人々の姿を、白石監督と、香取さんを始めとした俳優陣、スタッフは物語の中に織り込んでいく、という形で見事に描写しました。特に人々が様々な職種で「働く」姿を丁寧に捉えてた映像に心打たれました。
ほぼ毎日だよ!依存症か!
はい。そうなんです。ごめんなさい。大阪まで行っちゃいました。てへぺろ。嘘です。今は行きません。
ちゃんとおうちにいましょう。
パチンコは換金出来ます。少し説明しますと三店方式と言って、まずパチンコ屋で玉を特殊景品に交換します。その後離れた場所でそれをお金に交換です。面倒くさいでしょ?そうなんです。現在はお金と替える場所はTCUショップと言ってガラス越しでお互いの顔が見えます。
さて昔の話です。換金場所は大抵近くの小屋です。そこには縦約20cm横約50cmの穴が空いています。この穴を通して特殊景品とお金のやり取りをするわけです。
あるパチンコ屋で特殊景品(ライター石が多かったです。現在は金です)を換金していた時の事です。どうも、いつも微妙に少ないのです。両替する場所は顔が見えません。手がシワシワなんでおばあちゃんでしょう。
皆さん、考えて下さい。お皿に例えば一万五百円を置く時どうしますか?まずお札を置いてその上に必ず硬貨を置きますよね。そのおばあちゃんは必ずお札の下に硬貨を置くのです。普通はそんな事は有りません。かなり高い割合で500円はお皿に残りおばあちゃんの懐に入ります。昔こんな貯金箱がありました。あれ何が面白かったのでしょうか。
閑話休題、おばあちゃんは少額でも必ずその技を繰り出すので結構な収入になります。
しかし客もそこまで馬鹿では有りません。お札の下に硬貨がある。私も含めて客は学習しました。しかしおばあちゃんは新技を編み出しました。
まずお皿の端の曲面の部分に硬貨を置きます。そしてその部分を客側に向けます。客からは死角になるように計算しているのです。凄いです。小金稼ぎの執念が。おばあちゃんの言い分はこうです。想像ですが。
「あんたらはなあ、遊んでお金儲けして、いい気なもんや〜こっちはなあ〜 一日中ごっつう狭い所で、人の金勘定やで!だからなー小金を貰ってもバチ当たらんやろ?あほんだら」
いや違う。その三万円を得る為に使った金を考えた事があるか?三万二千円だよ!マイナスなんだよ。遊んだのは認める。でも費やした時間は5時間だ。失った物も多い。
あなたとの闘いの日々。我が青春の日々。全てが懐かしい。
いや単なる犯罪じゃねえか❗️かっこよく言うんじゃねえ❗️
はい。両替所との攻防は沢山ありすぎて、きりがありません。ここから映画の話しに致します。もう読まないでも良いです。
競輪依存症の木野本郁男(香取慎吾)は内縁関係の昆野真弓(西田尚美)と一緒に宮城県の石巻に移住します。真弓には連れ子の美波(恒松祐里)がいます。
石巻には競輪場が有りません。ところがなんと
ノミ屋があったのです。郁男は再度通い始めます。依存症だね。何回も思った。そのお金は使っちゃだめだ!
まあ依存症なんで仕方ないんです。貴闘力も言ってましたが、こういう人間は勝った時の記憶しか残らない。負けた記憶は消去。そんなもんだ。
そして衝撃の出来事が起こります・・・
郁男の人間性には、びた一文共感出来ません。しかしギャンブラーとしてはわかります。例えば五万円持っていて四万円負けたとします。しかし最後の一万円が六万円になるかもしれない。本当に馬鹿です。
そんなクズ人間を香取慎吾は上手に表現していました。おっはーとかニンニンとか言っていた人とは思えません。
内縁の妻、真弓役の西田尚美ですが、この人日本人で見たことがない人って居るんですか?いっつもいるよ!テレビだとNHKからテレ東まで、映画だと東宝から東映まで。いっつもいる❗️
そして誰もいなくなった、でも尚美はいる。いっつもいる!もう見飽きた。いやごめんなさい🙏尚美!好き!
そういう事で終わります。慎吾ちゃんのダークサイドを堪能しました。こんな長文を読んで頂けただけで恐縮至極でございます。ありがとうございました。