生きる(1952)

7.4/10
合計18件のレビュー
ジャンル   プロット
ランタイム   143分
言語   日本語
地区   日本
劇場で   10月09日 1952
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生きる(1952) プロット

市役所の市民課長・渡辺は30年間無欠勤、事なかれ主義の模範的役人。ある日、渡辺は自分が胃癌で余命幾ばくもないと知る。絶望に陥った渡辺は、歓楽街をさまよい飲み慣れない酒を飲む。自分の人生とは一体何だったのか……。渡辺は人間が本当に生きるということの意味を考え始め、そして、初めて真剣に役所の申請書類に目を通す。そこで彼の目に留まったのが市民から出されていた下水溜まりの埋め立てと小公園建設に関する陳情書だった。この作品は非人間的な官僚主義を痛烈に批判するとともに、人間が生きることについての哲学をも示した名作である。

生きる(1952) 俳優

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生きる(1952)コメント(20)

qlitxp
qlitxp
正に神作品
日本映画の枠を超えて世界の映画の中でも屈指の名作だと思います

黒澤監督作品の常連俳優と言えば三船敏郎と志村喬
その志村喬の恐ろしいまでの鬼気迫る演技が全編に満ちています

胃癌による余命宣告による死を意識した事によるマインドセットの転換という劇中の設定になっています
しかし本作のテーマは死を意識したという前提では決してありません

渡辺課長はミイラとあだ名をつけられています
今風にいうならゾンビでしょう
生きているのだか、死んでいるのだかわからない
いや魂は死んでいるのだが、でも生きているのです

役所批判が本作のテーマなぞでは毛頭ありません

それは主人公が生きながら死んでいることを演出として説明するためのものに過ぎないのです
大きな組織はみんな大なり小なりそんなものです

誰もが、家族のために、独身であれば自分が生き残る為に、その為に自己を殺して生きているのです

ミイラのようにならないで働けているひとは本当に幸せです
そんなあなたは、とよのように確かに生きていると言えます

病院で看護婦さんが言うベロナールは当時の睡眠薬の名前です
無論大量に飲めば死にます
市電の脇のおでん屋むさしで出会う小説家が、店の主人に家で待つ編集者に原稿を届けにいくついでに買いに行かせたアドルムも睡眠薬です
この小説家のモデルはこのアドルムという薬の名前とその後の行動と言動から、なによりその風貌、衣装、丸眼鏡から破滅型の小説家として有名な坂口安吾その人で有ることは明らかです
彼は当時覚醒剤とアドルム中毒で精神錯乱の末、入院して世間を騒がせたことで有名です

その彼がモデルの小説家が渡辺課長に、与えられた生命を無駄にするのは神に対する冒涜だと諭すのです
渡辺課長が黒い犬に酒の肴を落として食べさせるのを二人がじっと見るシーンは、彼が生きる意欲を喪失していることを象徴するのもでした

小説家は言います
あなたはこれまで人生の下男だった
人生を楽しむことは人間の義務だと

ゾンビが生きていることを実感するには、これもまた真理です

彼は渡辺課長に人生の快楽を教える代わりに、代償に魂を要求しない善良なるメフィストの役を務めると言います
つまり悪魔の誘惑と言うわけです

メフィストフェレスの化身は黒い犬です
だから彼はおあつらえ向きに黒い犬がいる、早く案内しろというのです

渡辺課長が新しい帽子を被って行く静かなカウンターのバーは文豪が通う店で有名な銀座5丁目のルパンがモデルでしょう
店の雰囲気とカウンターの上のランタンが似ています
きっとそれ以外の彼が連れ回すお店は全部モデルがありそうですが残念ながら浅学で分かりません

新しい帽子は、彼の新しいマインドセットを象徴する記号として全く見事な演出です

しかし引き連れわました果ての娼婦と一緒のタクシーの中で、渡辺課長の余りの哀れさに、自分は悪魔足り得ないと片手で顔を覆い伏せるのです
彼が教えたような快楽では、最早生きている意味を感じこともできず、魂が満たされないほどに、渡辺課長が冷たく死んでいるミイラだと知ったのです

ゾンビになってさ迷う渡辺課長は、結局とよから自分の魂が満たされうる本当の喜びとは一体自分に取って何なのかを掴むのです
ウサギのオモチャの象徴する、シンプルなことでも魂が充足する喜び
そしてハッピーバースデーの歌
本当に素晴らしい感動的な演出でした
特にハッピーバースデーはエヴァンゲリオンの最終回のおめでとうのシーンはこのシーンのオマージュだったのかも知れません

それこそ胃癌という十字架を背負ったキリストが復活した瞬間でした

そしてグダグタの通夜のシーンこそ、エクセホモなのです
この人を見よ!のシーンだったわけです
回想のシーンとは鞭打たれるキリストの光景なのです
そして彼は奇跡を成し天に召されたのです

私達もミイラかもしれません
大野係長は課長に昇進するとたちまちかっての渡辺課長と瓜二つになっています
糸こんにゃくの木村も結局椅子を蹴って立ち上がったものの書類の山に顔を隠すのです
橋の上から背中を丸めて新公園を見下ろしてとぼとぼと去る姿は、彼もまたかっての渡辺課長そっくりです

何の為に生きているのか?
渡辺課長のように新公園を残すような立派なことをなすことでなくてもよいのです
とよのようにオモチャの製品を作ることに喜びを見いだすことでも良いのです
それこそ小説家の言うように快楽の為であっても良いのだと思います

日々を無感動に生きること
それはミイラなのです

死を宣告されたひとや老人だけが渡辺課長ではないのです
中高生でも、大学生でも、新入社員であってもミイラになりえるのです

あなたはミイラになっていませんか?
渡辺課長になっていませんか?
それこそが本作のテーマなのだと思います

死期がせまったからの話ではありません
人間はいつかは必ず死ぬものです
必ず老いるものです

生きているという実感を味わうように貪欲になるべきなのです

ブランコに乗って主人公が歌う有名シーン
その歌詞こそ本作のメッセージそのものです
slunia
slunia
私的映画ランキングベスト5に軽く入ってくるこの上なく大好きな作品。好きな映画は?と聞かれてパッと思い浮かぶ作品のひとつ。星5でも全然足りないくらい力を与えてくれる。2016年の「午前十時の映画祭」でスクリーンで観ることが叶い感無量。

黒澤監督の魂のこもったメッセージに、心から熱くなり共鳴することができる。「ゴンドラの唄」が胸に沁み渡り、心が澄み渡る。行き詰まった時に観たくなるそんなバイブル的な作品。黒澤明監督は偉大な映画監督であるのと同時に偉大な人格者。真に「生きる」ってこういう事だろう。

この国の税金を食い散らかす私欲に犯された政治家や、与えられた仕事をマニュアル通りにしかこなさない鈍臭い役人達に観せてやりたい。心動かされ少しでも初心に戻り真理に近づくことが出来ると思う。「議員や役人に就職した人は月に1回は「生きる」を鑑賞する」そんな法律が出来たらこの国はもっと良い国になると思う。酷い汚職をして尚居座ろうとする強欲な政治家には「時計じかけのオレンジ」のアレックスがされたばりに強制的に観せて治療すべき!...笑 それ程までに人の心を揉み解してくれる神がかり的な力のある作品。黒澤明監督を心の底からリスペクト。
dkertrz
dkertrz
1952年にコレが作られたってのがすごい。

噛めば噛むほどという映画のうちのひとつ。
日本人の汚い部分もまざまざも見せ付けられて
すごくイヤな気持ちにもなった。
でも、勉強になるし、必要な「イヤな気分」なのだろう。

作家さんの
「人生を楽しむのは人間の義務ですよ」
「貪欲に生きなきゃ。貪欲は悪徳なんて古いんです、
貪欲は美徳なんですよ」
「与えられた生を「生きない」のは神への冒涜ですよ」

これらの言葉が忘れられません。
ntsziqs
ntsziqs
ネタバレ! クリックして本文を読む
30年間、部下からはミイラとあだ名をつけられ、亡骸のように市役所に勤務してきた主人公渡邊。ただただ無意味に忙しく、何もなさないことが義務であるかのようなお役所仕事の日々。意欲もなく死んでいるかのように生きている毎日。しかし受診して胃癌により寿命僅かと悟り、これまでの人生で一体何を成し遂げてきたのかと呆然とします。

作品では、無能な役人達を痛烈に批判しており、渡邊も市民の要望に向き合わない市民課長として当初はその批判の対象です。問題から目を逸らすのはいけませんが、寡夫となってしまい一人息子のために長年真面目に勤めてきたであろう点は全く恥じることはないと思いました。

とにかく演出が上手いです。

渡邊がとっさに案ずるのは男手ひとつで育ててきた光男のこと。盲腸の手術に向かう光男の汗を拭いたハンカチで自分の汗を拭く姿。成人した光男との隔たりを感じて階段でうつむく淋しい姿。父親の愛が伝わってきました。
慣れない道楽に耽り、脱け殻状態の時は瞬きひとつせず、死に取り憑かれたようなゾッとする目つき。公園事業に目標を見出してからは生き生きと輝く瞳。志村喬の演技に惹きつけられます。

よく笑いよく食べる小田切は天真爛漫で生命力そのものといった感じでした。「私ここには向かないわ」とそろばんでおでこをかく可愛い姿(^^)。

隣席で誕生日祝いの歌が流れる中で、死を認識した上で新たな「生」に目覚め、生まれ変わるかのようなシーンはさすが!とても印象的です。
うさぎのおもちゃ可愛い。
満員電車のごとくひしめき合うダンスホールにはびっくり…(・・;)。

渡邊の葬儀では故人と遺族を前に言いたい放題(^^;)。職場で彼がどのように見られていたか、お役所の縦割りの「煩雑極まる」機構、役人の本音が飛び出します。
最近の作品では、"I, Daniel Blake"が英国でのお役所事情を市民目線で批判していますね。万国共通なんでしょうか…。
実は胃癌じゃなかった、てオチも面白いかなと思いましたが…そういうハリウッドコメディもありましたよね。

死ぬことだけは皆確実に決まっているが、それがいつなのかは分からない…。生きている時間を無駄にしていないかという普遍的な疑問を訴えています。業績としては横取りされてしまったかのようですが、渡邊のように公園という目に見える形で後世に何かを残せる人は幸運だと思います。小田切のように楽しい方向へ進めるのも幸せな生き方です。そんなに上手に生きられなくても、微かな影響を与え、僅かの波紋を広げ、誰かの記憶にうっすら残る、「一隅を照らす」そういう人生でも立派に生きているのだと信じたいです。
snwawe
snwawe
こりゃあ凄い、
初の黒澤作品。
静と動の対称で印象づけたり
重いことを明るく仕上げたり
本当に現在にも生きる技術を
作り上げた人だったんだなあと思った

あの絶妙な間で
私たちをキャラクターに感情移入させたり
考える時間を与えている
とても大切な間
あれ以上長くてもダメだし、本当に絶妙

深刻なシーンでも客を笑わせる
そんなことが出来るんだと思った
細かい言動ぜんぶが演出なら相当こだわってる

ストーリーも素晴らしくて、
決して真似したくはない主人公なんだけど
私たちは確実にこの人から何かを得て
何か学んだ。