平凡であることを嫌う変わり者の青年と、彼が密かに思いを寄せる女性との10年間をつづった青春映画。自分勝手で少し変わり者の“ボク”は、高校で同じ器械体操部に所属していた平凡そのものの女の子・まなみのことがずっと好きだった。高校時代、大学時代、現在までの10年間で多くの出会いと別れを経験しても、まなみに対するボクの思いは変わらず、その理由もわからない。やがて、まなみが結婚することになり……。「うみべの女の子」の青木柚がボク、「アルプススタンドのはしの方」の中村守里がまなみを演じ、「サマーフィルムにのって」の伊藤万理華、「死刑にいたる病」の宮崎優が共演。「満月の夜には思い出して」の川北ゆめき監督がメガホンをとり、川北監督の実体験をもとに「苦役列車」のいまおかしんじが脚本を手がけた。シンガーソングライターの大槻美奈が音楽を担当。
まなみ100%コメント(15)
高校生のボクは入部した器械体操部でまなみちゃんという魅力的な女子に出会う。
その後、環境が変わり様々な人と出会いや別れを経験していくが、ボクにとってまなみちゃんはずっと大好きな特別な存在だった。
そんなまなみちゃんとボクの10年の物語。
クラウドファンディングをやっている頃からキャストと設定に惹かれて1年くらいずっと楽しみにしていた作品。
まなみちゃんのことが100%だった男(監督)のほぼ100%実話の話。
彼女への態度だったり、浮気体質なところだったり、かなりクズ男として描かれていて、監督はよく自分をモデルにここまで描いたなというのが第一印象なんだけど、何故か全く否定することもできない。
自分にも潜在的にこういった部分があると気付かされる。
彼女はいるけどまなみちゃんと結婚したい、この感情が分からなくもない。
「好き」という感情は本当に難しい。
“ボク”もきっと「好き」が分からないのだろう。
物凄くどうしようもないくらいずっとまなみちゃんのことが好き。
だけど、その挨拶くらい当たり前の愛をいざ言葉にしてしまうと軽くなってしまう、嘘っぽくなってしまう。
そして、その愛は本当に愛を伝えたい人に伝わらない。
彼女が結婚する。
どんなに想いがあってもそこまでに伝わらなければおしまい。
舞台挨拶で仰っていたが、実際にはまなみちゃんは結婚していないし、監督自身も断ち切れていない部分がありそうな感じだった。
だが、たとえずっと愛し続けている唯一無二の存在だろうと、「好き」の気持ちが分散している時点で踏ん切りを付けるべきなのかもしれない。
あの結婚式のシーンには監督なりの覚悟が見えた。
(この話をこれ以上すると今現在の自分に痛いほど刺さるのでこの辺で……)
恋愛のリアリティのみではない。
いわゆる青春のあの頃が鮮明に蘇った人も多いはず。
思春期の無敵感だったり、正義に走るイタさだったり、仲間とのバカ騒ぎだったり、そんな日常の片隅にいつもいて見つけられるとちょっと嬉しいあの子の存在だったり。
楽しい思い出も苦い経験も、今思えばみんな今の自分に繋がっていて、今の自分もまだ大人の階段を登り始めたばかりだけど、ノスタルジックでエモーショナルでちょっとセンチメンタルな気持ちにもなる。
思い出が走馬灯のように頭を巡る、合唱のシーン。
合唱曲の『虹』が本当にいい曲で、やはりその中でも輝きながら歌っているまなみちゃんとそれを眺めるボクを観たらもう自然と目が潤んでしまう。
もう2度と戻ってこない最高の時間だから、楽しかったことも悔しかったことも思い出しては胸を締め付けてやまない。
それぞれ浮かぶ景色は違えど、この映画を観て郷愁を感じた人は自分なりの“あの頃”に思いを馳せるはずだ。
この映画は瀬尾先輩の一件があって監督が制作を決めたらしい(舞台挨拶より)。
伝えたいことは伝えられるうちに伝える。
なんだってそうだ。
瀬尾先輩が教えてくれた大切なこと。
魅力的な登場人物と魅力的なシーンの連続。
この感動を味わいに公開されたらもう一度観に行こう。
(2人の靴踏みシーン控えめに言って最高です)
名映画監督の歴史上の偉人の人生の軌跡を辿る。みたいな映画は往々にしてあるが、弱冠20代の青年監督が自分の人生を追憶する。というのは趣きがある。
主演の青木柚、中村守里の演技はもちろんのこと、アンサンブルキャストの演技も素晴らしかった。
まるで自分がボクと同じ10年を辿ったかのようなノスタルジーを感じた。
総じて、荒削りな部分を含めて監督の正に「今しか作れない」作品であることが感じられ、何か血気迫るものが宿る傑作だった。
全国に散らばるシネコンの中でも圧倒的な地位である"イオンシネマ" 今作が此処に掛る意義というものを考え倦ねているというのが実感である いやいや、作品そのものの評価とは関係無い 個人的には感銘した内容である 若い監督と制作陣との関係性や、脚本"いまおかしんじ"の繋がり、出役陣の関係性、どれを取ってもきな臭さが消臭できないのは何故なのか、そんなモヤモヤ感を感じてしまうのである
ここから今作の感想
監督の実体験を映画化する 古今東西定番だ 何せスピルバーグ御大自体最近堂々公開している(フェイブルマンズ未鑑賞)
今作の全ては大槻美奈『道標』に集約されている MOOSIC LAB企画との事だから楽曲の強さを強調する事は予想したのだが、此処までとは・・・ 学生時代の合唱ってなんで果てしなく過去に引っ張られるのだろうと、まるで悪魔の笛吹きの如くと思うのは自分だけだろうか・・・・羞恥に塗れた10代を赤裸々に映像化することの清廉と自意識過剰さを臆面もなく体現してみせた制作陣に先ずは称賛を送りたい 勿論実際はもっとドロドロなのだろうけどそこは大人の事情でしょう(苦笑
まなみちゃんの合唱のシーン、車の中の劇判、そのどれもが、あの時なんでみんなで歌を唱っていたのだろうと、どうでもいい記憶を、実は本当に大事なインパクトだったと初老になって気付くマジックを体現させられた作品である
自分は、主人公のように『次行ってみよう』の精神ではなく、ウジウジ考えてしまう性格だったが、でも、本当に好きな人には腫れ物に触るような、それは自分の自意識をバリアーする姑息さを丁寧に演出してみせた作品だと評価したい 多分、今でも高校時代に付合っていた女性は好きだ 勿論、幻想であり、当人にとっては迷惑千万
でも、人生に於いて『恋愛』とは何だと問われたならば、真っ先に自分は、あの時代にジャンプする 主人公と同じく直ぐに一緒に暮らしたい、結婚したいなぞ、よくもまぁ生活力経済力の無さを棚に上げていけしゃぁしゃぁと妄想したものだ
結局は彼女は別の人と一緒に暮らすことになる その間の何度も訪れるチャンスを流し、結局は結ばれない 運命といえばそれまでだが、運命以前の問題であることは明白だ 部活に真面目に取り組む先輩が何人も交際を断り、でも運命の悪戯か、重い病気に罹る非情さ あのほっぺのキスシーンは今作の白眉であろう
甘酸っぱさ、だらしなさ、それでいて嘘の無さ 十代は誰でも訪れ、そしてあっという間に過ぎる それを思い起こさせてくれるのはこういう何の世界も救わない、驚くような事が起きない、何の毒にも薬にもならないそれでいて幸せだった作品を観ることなのだ あの頃には決して戻れないのだから・・・