孤高のバンド「フィッシュマンズ」に迫るドキュメンタリー。1987年に結成され、91年4月21日にシングル「ひこうき」でメジャーデビューしたフィッシュマンズ。ほぼ全ての楽曲の作詞・作曲を担当していたボーカルの佐藤伸治が99年に急逝したが、バンドは活動を続け、デビュー30周年を迎える現在も音楽シーンに影響を与え続けている。映画は2019年2月に開催されたイベント「闘魂2019」のリハーサルから撮影を開始し、同バンドが結成された明治学院大学の音楽サークル「ソング・ライツ」の部室や、渋谷La.mama、渋谷クラブクアトロ、三軒茶屋クロスロードスタジオ、VIVID SOUND STUDIO、日比谷野外音楽堂といった縁の地をメンバーとともに訪れインタビューを敢行。現・旧メンバーが当時について振り返るほか、関係者が保管していた100本以上にも及ぶVHSなどの素材をデジタル化した未発表映像を多数収録。
映画:フィッシュマンズコメント(19)
が、蓋を開けてみれば3時間はあっというまだった。
個人的に特に印象深かったのは小嶋さんと柏原譲さんが脱退するに至った経緯、そのあたりを本人達が理由をはっきり語られたわけではないけど語られたことを繋げていったらはっきりとわかったような気がした。
まぁとにかく最高でした。
翌日まで余韻がかなりすごかったです。
上映時間3時間弱でフィッシュマンズというバンドの約10年をおさらいするような作品でした。時間が気にならない素晴らしい構成、内容、編集です。プロデューサーさんがデビュー当時からのフィッシュマンズの大ファンだそうで、きっと痒い所に手が届く内容になっているんでしょうね。僕は残念ながらフィッシュマンズの音楽は1、2曲程度しか知らない音楽ファンです。ですから彼らのことはよく知りませんし、こんなに沢山曲を聞くのは初めてでした。
ドキュメント映画作品としては初公開の音源、映像がたくさんあった(と思いますが)ので、ファンの方々は大変喜んだのではないでしょうか?僕としては佐藤さんの歌詞が描かれたノートの描写がグッときましたね。表現者って感じが伝わってきましたね。また、インタビューの密度が高かったと思います。誇大化するでも良い思い出だけを話すでもなく、みなさん真摯な言葉で過去をお話しされている感じがとてもよかったと思います。監督自身がインタビュー行ったと思いますが、とても良い聞き手だったのかな?って思います。みなさん、思い出したくないこともあったと(勝手に)思っていますが、しっかりお話いただいているので。だからでしょうね、妙な装飾物がない印象です。また、当時のバンドの空気まで伝わってくる感じでした。この点だけでもドキュメント作品としては素晴らしいですね。
作品はバンドの日記を1ページずつめくっていくように丁寧に展開していきます。本当に丁寧なんです。この神格化、伝説化しようとしていない等身大の描き方が本当に好感が持てます。故に、このバンドが産声をあげてからの出来事を見ていると、「あぁ、世の中の多くのバンドがこのような物語を持っているんだろうなぁ」って思います。バンドという集合のリアルな物語が本作に描かれています。そして、フィッシュマンズだからこそのエピソードがそこに乗ってくるのですね。その描き方が映画的ではないかもしれません。バンドのコアであった佐藤さんに思いっきりフォーカスをしていない点もフィッシュマンズというバンドを表しているのかもしれません。その点はすごく興味深かったですね。バンドの音はバンドが作る。という意思の表れではないでしょうか?映画もしかりってことで。
茂木さんが本作はあるチャプターの締めになったと仰ってました。なるほど。確かにそんな気がしました。総括みたいな感じです。ですから初心者にはもってこいですし、ファンの方は改めて「好き」を確認できるのではないでしょうか?僕はおかげさまで観賞後、フィッシュマンズを聴く機会が増えました。好きになりましたよ。
監督はカットしたインタビューが山ほどあるって仰ってました。制作の裏側もたくさんお話しいただいたと。(やはりインタビューのクオリィティ高いですね)いずれ映像として公開してほしいですね。
秀作でした。
バブル景気が終わる頃から、短期間活動したらしいが(メジャーデビューから8年?)、冒頭でバブリーなオーストラリアでのレコーディング遠征が映されて面白かった。
このドキュメンタリー映画は、インタビューと当時の断片的な映像で占められ、音楽をじっくり聴くことはできない。
もともとの音源の質が良いものばかりではないので、映画館の大音響で曲を楽しもうなどとは、期待しない方が良いと思う。
なので帰宅後、CD「宇宙 ベスト・オブ・フィッシュマンズ」を聴いてみた。
ポリドール移籍後の方が、オリジナリティがあって評価が高いみたいだが、自分は移籍前の曲の方が好きだ。
どこかレゲエ風だが、忌野清志郎の歌い方もパクってたりして、ジャンル横断的で、才能がキラキラしている。
一方、ポリドール移籍後は・・・。
回りくどいし、少し脱力的だし、メロディーも良くないし、「この路線では、それほど売れないな」と思う。
病的で実験的な曲の方が、コアなファンの心に刺さって、カルトな人気を得るのかもしれないが、メインストリームにはなりづらいタイプの音楽だ。
曲を聴いた後で、改めて映画を振り返ってみると、このポリドール移籍前後で、いろいろと環境の変化があったことが、良く分かる。
ムリして“売れ筋”の曲を書いたのに売れなくて、ガッカリして世評から背を向け始めたこと。
ギターの小嶋が抜け、移籍後には専用のスタジオを持ったのに、キーボードのハカセも脱退したこと。
一般的に、ある程度売れたバンドが、途中でメンバーが替わったり、ソロになって、成功した例は少ないと思う。
なぜか分からないが、そのメンバーでなければ実現できない“何か”があるのだ。
佐藤は、もともと曲作りは人には見せなかったらしいが、曲ができあがった後のアレンジは、バンドに任せる部分も多かったようだ。
しかし、最後の頃には、バンドのメンバーが入り込む余地がないデモテープを作ってきたという。
“セルフプロデュース”を始めたのは移籍前からとはいえ、佐藤は自分の世界に入り込み過ぎてしまったのかもしれない。孤立を深め、だんだん暗く沈んでくるようすが、映像にも現れている気がする。
全部で172分もあるこの映画だが、最後はダレたとはいえ、“長い”とは感じさせなかった。
少しづつ、何かが生まれ、何かが壊れていく時間の流れが、とても緻密に記録されているからだ。
インタビューの内容は濃いし、みな、とても真剣だ。
自分も、「泣いた」とか、「佐藤は時代を先取りした孤高の天才だ」などと、気の利いたことを言えば良いのだろうが、そんな心にもないことを言うつもりはない。
「フィッシュマンズ」は、それほどすごいバンドとは自分は思わない。
しかし、自分のような「フィッシュマンズ」の曲が好きでない人間にとってさえ、短い期間に自らを燃やし尽くした独特なアーティストと、そのバンドの顛末を記録した本作品は、きっと、とても興味深いはずだ。
もしかしたら佐藤という人は、“神格化”されかねないのかもしれないが、この実録ドキュメンタリーは、良い解毒剤になるだろう。