シンガーソングライターのジェームズ・テイラーと「ビーチ・ボーイズ」のデニス・ウィルソンの主演で描かれたロードムービー。賭けレースの相手を求めてロサンゼルスを飛び出したザ・ドライバーとザ・メカニックは、車に転がり込んできたザ・ガールを加えた3人で旅を続け、途中のガソリンスタンドで出会った中年男と互いの車を賭けた大陸横断のレースをすることになる。ユニバーサル映画がアメリカン・ニューシネマの野心作として製作するも興行的に惨敗し、メガホンをとったモンテ・ヘルマンが映画製作から遠ざかる結果を残してしまった伝説的な一作。2012年、ヘルマン監督の21年ぶり新作「果てなき路」(11)の公開にあわせニュープリントでリバイバル。
断絶コメント(2)
登場人物全員名前がない
誰も自己紹介すらしない、名前も聞こうとしない
中年男は身の上を話しても全て口からでまかせで毎回言うことが違う
弛い感じのロードムービーながら、通低する重低音が重苦しく微かに聞こえてくるイメージの映画で、当時の空気感が伝わってくる
若者の二人は人気シンガーソングライターのジェームズテイラーと超人気グループであったビーチボーイズのメンバーのデニスウィルソンが演じているが、彼らの楽曲は一切使われない
この二人の演技は大根だが演出は一切ない
それがまたこの映画に独特の味わいとマッチしている
盛り上がりもない、これといったエピソードも事件も起こらない
しかし最後まで退屈せずに観てしまう
監督の手腕はただ者ではない
ヒットせず、有名でもないけれども隠れた名作とは本作のような作品を言うのだろう
兎にも角にも、作品全体を支配しているくたびれた様な疲弊感が凄い。
ジェームス・テイラー& デニス・ウィルソンが演じる、その日暮しの生活に疲れ果てたストリートレーサー2人の疲弊感。以前はその生活を楽しくやっていたのだろうけど、先の無い生活に心底疲れ果て無気力な状態に陥ってきている。
ウォーレン・オーツが演じる、嘘ばかりついて自分を大きく魅せようとする中年男性の疲弊感。良い車に乗ってヒッチハイカーを乗せる度に自分の経歴を偽り、他人に自分を大きく魅せようとするが、決して心の底まで満たされることはなく、自分の歩んできた中途半端な人生に怒りすら感じている様に思える。
ローリー・バードが演じる、行く宛もなく只々放浪するヒッチハイカー少女の疲弊感。乗せてもらっている車やバイクを気分次第でコロコロと乗り換えるが、そんな何の目的も無い気まぐれな生活にほとほと疲れ果てている様に思える。
ベトナム戦争などによって疲れ果てた当時のアメリカの疲弊感、そして自由を追って生きてきた人々の末路的な孤独感と疲弊感にアメリカン・ニューシネマの真髄を感じた。「イージーライダー」に通づるものを深く感じるアメリカン・ニューシネマの傑作。