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LOVE LIFEコメント(20)
本作では愛する夫と結婚して幸せな結婚生活を送っていた女性が、突然深い悲しみが訪れたことを機に自分の本当の気持ちに気づき、自分の人生について選択をしていく過程を描く人間ドラマです。
深田監督作品はあまり好きではありません。深田監督の映画は、いつも観客を安全地帯から追い立て絶望に導くからからです。暗く思い感情にかき立てられてしまうのです。
例えば「淵に立つ」や「よこがお」で、自分が信じているものを根底から揺るがそうと、鋭い問いを投げかけてきました。今作でも平穏な日常を揺さぶって、足元の思わぬもろさをさらけ出すことになります。加えて、不意の侵入者が人間関係の均衡を崩すのは、深田作品にはおなじみのモチーフといっていいでしょう。
人は、誰しも孤独を抱えて生きているのに気づかないふりをしているというのが、深田監督の持論なのでしょうか。本作では平気を装っていて、見て見ぬふりをしてきた「孤独」を突き付けられたとき、その孤独とどう向きあうのか思い知らしめる作品でした。『LOVE LIFE』という曲で歌われている「愛」について「人生」について、本作では入り口にもたどり着けていないと思います。
映画の始まりは、穏やかな家族ドラマの道具立て。妙子(木村文乃)が暮らす部屋からは、集合住宅の中央にある広場が⼀望できます。向かいの棟には、再婚した夫・二郎(永山絢斗)の両親が住んでいて、常に行き来ができる身近な関係でした。
妙子は、ホームレス支援のNPOで働いていて、二郎も市役所の福祉課勤務とふたり揃って福祉関係の仕事で働いていたのです。
妙子は前夫との子供敬太を連れ、二郎と結婚して1年。一見、幸せそうですが、妙子は再婚で、韓国人の前の夫、パク(砂田アトム)は行方不明のまま。一時は結婚寸前だったのに、妙子と二股をかけられ、捨てられてしまった二郎の元カノ山崎理佐(山崎紘菜)の影もちらついていました。だから、義父の誠(田ロトモロヲ)も結婚を歓迎していないなかったのです。
そんななか、息子の敬太(嶋田鉄太)がオセロ大会で優勝したので、お祝いの会が自宅で開かれます。誠の誕生会も兼ね、楽しく過ごしていました。しかし誠は、まともに妙子の顔も見ようとしません。妙子に好意的な姑の明恵(神野三鈴)ですら、妙子に胸をえぐる不用意な一言を漏らしてしまいます。そんなお祝いの会のなかで、妙太が風呂場で溺死してしまう事故が起こるのでした。
葬儀会場で哀しみに打ち沈む妙子の前に、失踪した前の夫であり敬太の父親でもあるパクが突如現れて、敬太の死の責任を問うかのように、いきなり妙子を平手打ちにします。 それでもろう者であるパクがほっとけず、身の周りの世話をするようになる妙子でした。
一方、二郎は以前付き合っていた理佐と会っていたのです。哀しみの先で、妙子どんな「愛」を選択するのか、どんな「人生」を選択するのでしょうか…。
序盤から愛する息子の事故死で、深田監督は観客も巻き込み妙子を孤独の奈落へと突き落とすのです。
そんな妙子の孤独にするりと侵入してきたのが、パクだったのです。実は、彼こそ、妙子が本音で向き合えるもう1人の人なのでした。けれども頼りなく無責任。身勝手な男にしか見えないが、妙子は彼に対し優しく振る舞うのです。
2人の親密な様子は、ホームレスの支援活動をする女と貧しい男の関係を超えていました。ふたりを強く結びつけるのは韓国の手話が通じ合うことだったからでしょう。ろう者のパクと話すのに、当然、妙子は面と向かうことになります。遠くにいては分からないから近づくことに。相手の目を見る。手の動きを追う。手話というコミュニケーション手段の雄弁さが際立ち、上滑りの言葉がいかにむなしいか、痛感させられました。
そんなコミュニケーションツールをもたない二郎は、パクに親身で世話をする妙子が理解できません。それでも妙子とどんなラブライフを送ることができるのか。この問いを、深田監督は観客に投げかけているのでしょうか。あなたはそれでも相手を愛せますかと。 但し今作の深田監督は、妙子を突き放したままにはしていません。最後にふたりの新たな一歩の可能性を示てくれたことには好感が持てました。
追伸
「弱い人だから放っておけない」と韓国にいる父が危篤になったというパクに、二郎を置きっぱなしにしてまで釜山まで付き添ってしまった妙子。そこには本当の愛情は感じられませんでした。それは夫からの一度的な逃避の気持ちがあったのかもしれません。そしてパクに対しては、元夫に対する愛情めいたものはなく、ただひたすら「可哀相だから助けてあげたい」という介助対象者に対する気持しかなかったのです。それを愛だと勘違いしてしまったことが一度目の結婚の破局にむなってしまったのでしょう。パクの行動はあくまで、ただ単に自分勝手であり、妙子の献身はそれを助長させる甘やかせに過ぎなかったのです。釜山まで付き合って正しいのでは妙子は、パクの身勝手さを痛感するのでした。
砂田はろう者で、普段から芝居や手話指導の活動を行っています。なので手話のシーンは、俳優独特の作った表情ではなく、素のリアルさが感じられました。特に初登場の葬儀場でビンタするシーンの場の空気を打ち破る激しさは、彼でしか発しえなかったことでしょう。また愛嬌もあって、ずっと見ていると好印象を持ってしまうおおらかさがありました。
また、姑の明恵と妙子がベランダでたばこを手に話す場面。話題は明恵がキリスト教に入信した話になります。当然わが子を失った妙子が救いとなる信仰のはなしが展開するのかと思いきや、明恵は信仰ビギナーでまだ主の救いや福音が感じられないとこぼすのです。これは深田監督の本音を明恵に託したものだと思います。深田監督自身なにがしかの苦悩を抱えており、それが毎作の作品のモチーフとなってきました。ただ描かれるのは苦しさと孤独ばかりで、全然救いになっていません。
信仰者としては早く深田監督が納得される信仰とであい、愛と福音を受けとめるのか、それとも自ら悟りを深めて苦諦から逃れることができるようになることを期待したいです。そして寅さんように心から人々を笑わせ、幸福を感じられる作品を作って欲しいと願います。
【このレビューは書きかけです】
周りの映画好きの評価があまりに高いので、それに背中を押されて鑑賞しました。予告編すら観ていないため、内容に関する情報は一切ありません。
結論ですが、事前に予想していた内容とは全く異なり、非常に重い人間の裏表を描いた作品でした。間違いなく今上映されている作品の中ではトップレベルにクオリティが高いと感じましたが、内容が内容だけに万人にオススメできる作品では決してありません。
観ていて辛いシーンも多いので、鑑賞には体力が必要な作品です。人間の裏表を描いていて内容も重く、数日引き摺る作品です。それでも、間違いなく観る価値はある作品です。
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優しい夫である二郎(永山絢人)と再婚した妙子(木村文乃)。蒸発した前夫との子供である連れ子敬太(嶋田鉄太)と3人で幸せな生活を送っていた。敬太がオセロ大会優勝と二郎の父親である誠(田口トモロヲ)の誕生日祝いを兼ねて、ホームパーティが執り行われる。幸せなパーティの最中、少し目を離した隙に敬太が風呂場で溺死するという事故が起こってしまう。悲しみに沈み意気消沈の妙子の前に、敬太の死を知った前夫のパク(砂田アトム)が突然現れる。
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ある人物の死をめぐって周りの人たちが繰り広げる物語と言えば、昨年公開の吉田恵輔監督作品『空白』を思い出す方も多いと思います。それぞれの登場人物たちが加害者でもあり被害者でもあるという二面性が話の軸になっている部分も似ていますね。しかし、本作の重さは『空白』を凌駕している気がします。
本作の登場人物たちは、表面的には良い立ち振る舞いをしているのに、時折醜い裏の顔が覗くような感じで、そこが観ていて顔を顰めてしまうほどに
終始陰気な妙子としょーもない二郎。常に不機嫌な誠と一番タチの悪い明恵。そんな中、唯一子供らしさをひた走る敬太が、彼らのクセの強さをより一層際立たせる。
決して強く結びついているとは言えない、彼らの関係性と対照的に、関係が終わっているはずの妙子=パクと二郎=山崎、明恵=キリスト教がやけに濃い。
LOVE LIFEとはそういうことなのか?と、矢野顕子に聞いてみたい。
終始どんより重く辛さが支配する中、猫の気ままっぷりが効いてる。
細部にまで張り巡らされた設定とストーリー。
訳あり家族に突然降りかかるこれ以上ないような災難。これはきつい。この事件を掘り下げるだけでも濃い話になりそうだが、映画はそれぞれの気持ちの深いところまであぶり出す。
木村文乃演じる妙子の一本気なホスピタリティーは物語の推進力となるが、出色は永山絢斗と神野三鈴の親子だ。自分の気持ちより、周囲に合わせて常識的に親切に振る舞う善人。息子の方が母親よりより理性的であるが、逆にいうと他人と一定の距離を取り本心は見せず、状況で行動を選ぶ冷たさを感じる(けれど誰より犬や猫に懐かれてるのが面白い)
母親は事件で動揺して出た自分の本音を持て余し宗教にすがるがすがりきれない理性の持ち主だ。(それゆえに悩みは解消されない)
優しいが弱いと見えた妙子の元夫は、結構したたかな奴で、お節介なほど親切に見える妙子は大事な岐路ては計算高さを見せる。
世の中は理不尽でままならないけど、折り合いをつけて生きるしかない(それもいずれ破綻するかもしれないけれど、ずるしながらでも今を生きるしかないのだ)
「よこがお」も面白かったけど、どちらもスッキリとした結論を示さないモヤモヤを残したところがいいと思う
・・・と思ったら、最後の感じだと続いていきそう。
幸せにはなれないと思うけど。
端的に言って、登場人物全員クズでした。
といっても、“そういう煽り”の映画に出てくるようなキャラの濃いそれではなく、非常にリアルなクズ。
優勝祝いでの義父や、警察署での義母はまだマシ。
妙子は、相談もなく義父母の部屋にパクを住まわせたあたりから、ダメ男を助長する共依存が顕著になる。
二郎は、ハグで止めてたら一番共感できたかもだけど。。
パクは、フェリー乗り場での台詞などから(失踪の理由次第では)まともに思えそうだったのに、韓国に行って急落。
台詞通りなら、山崎は責任感じてていいコなんだけど、現実を考えるとあざとさ無しとは見られない。
総じて「こういう人いるな」と思わせる力はすごいのだけど、それ以上ではなかった。
リアリティのある描写から、現実の無常感や遣る瀬無さは強く感じたが、タイトルとは結びつかないし。。
何というか、掴みどころのない作品でした。
劇中で一番の、というか唯一の笑顔が出る場面が非常に皮肉。
それにしても、ああいう楽しくやってた裏側の悲劇ほど、行き場のない後悔が消えないんだよなぁ。