共産主義下にあった1980年代のポーランドを舞台に、肉食人魚姉妹の少女から大人への成長物語を野性的に描いたホラーファンタジー。海から陸上へとあがってきた人魚の姉妹がたどりついた先はワルシャワの80年代風ナイトクラブだった。野性的な魅力を放つ美少女の2人は一夜にしてスターとなるが、姉妹の1人がハンサムなミュージシャンに恋をしたことから、姉妹の関係がおかしくなっていく。やがて2人は限界に達し、残虐な行為へと駆り立てられていく。監督は本作が長編デビュー作となるポーランドの女性監督アグニェシュカ・スモチンスカ。「第10回したまちコメディ映画祭 in 台東」(2017年9月15~18日)の特別招待作品として上映。
ゆれる人魚コメント(20)
予想の斜め上をいく展開で、概ね楽しめた。
台詞が少なくて全体的に暗いトーンなのに、妙にミュージカル調なのも凄くいい。ミュージカルは基本的に好きじゃないけど、これは曲がポップなのもあればロックなのもバラードなのもあり、どれも素敵で飽きない。歌の分量も、本筋を邪魔しない程度なので本当ちょうどいい。
アンデルセンの人魚姫をベースに、ギャロのガーゴイルっぽい冷たさとグロさをふんだんに混ぜ込んで、そこにシェイプオブウォーターっぽい異種純愛テイストをチョイ足ししたかんじ。
これが英語ではなくてポーランド語なこと、時代設定が古めなことも、ファンタジー特有の違和感をうまく軽減している。
最高すぎてツライ。
冒頭は水の中から始まり、頻繁に水の描写があったり、そこに水はなくとも水の音が聞こえる。人間世界に人魚の水の世界が徐々に侵食していくようで、人魚の魅力に引き込まれている人間たちの姿を表現しているように感じた。セイレーンが人間を海へ引き込む時と同じように、水の中へと。
しかし、彼は人魚ではなくて、人間の女性を選ぶ。シルバーは朝までに彼を食べないと泡になって消えてしまうが、シルバーは彼を食べない選択をした。彼が人間の女を選んだから、「人間」として自分の最期を迎えたい、と思ったのかもしれない、人と魚のあわいを揺れることは、生と死のあわいを揺れることと同じだったみたいだ、
セイレーンは歌声で人間を惑わせるから、ミュージカルはぴったり、でも、神話の人魚のように、人を簡単には惑わせられない、現代の人魚は、人間になることを欲望して、大切な声を失い、泡になって命を失ったりもする、
おもしろくないとは言わないけど、ひとには勧めないし同じ監督の作品も多分観ないだろう。