イランの名匠アッバス・キアロスタミが1974年に製作した長編デビュー作で、サッカーの試合を観戦するため悪戦苦闘する少年のおかしくも切ない冒険を瑞々しく描いた人間ドラマ。小学校に通う10歳の少年ガッセムはサッカーに夢中で、宿題も授業もさぼりがちとなり先生や母親に叱られてばかりいた。首都テヘランで開催される大事な試合をどうしても観に行きたい彼は、交通費とチケット代を手に入れるため、家の金を盗んだり友人たちを騙したりと、あの手この手でお金を稼ごうとするが……。特集企画「そしてキアロスタミはつづく」(2021年10月16日~、東京・ユーロスペースほか)にてデジタルリマスター版を上映。
トラベラーコメント(6)
その後、数週間の間に「友だちのうちはどこ?」以降のグネグネ三作を鑑賞し、
”こんなにすごい監督がイランにいたんだ!”
と驚愕しつつ、配信でその後の作品も鑑賞。(流石に寝不足です・・。)
今作は、映画が、ワールドワイドな芸術作品であるという当たり前のことを、再認識させられた監督の初期作品である。
◆感想
・ストーリーはシンプルで、サッカーが大好き少年が、田舎からテヘランで行われるサッカーの試合をイロイロと、少年ながらのズルをしながらも鑑賞しに行く過程を描いている。
・実存主義的色合いを、随所に織り込ながらも、自らの”サッカーを観たい!”と言う欲求を満たすために行動する、落第生の少年の自然な欲求の発露を、自然に描き出すアッバス・キアロスタミ監督の手腕に唸る。
<大袈裟ではあるが、映画に魅入られた全世界の映画人の、私が生を受ける前から製作した諸作品を観る事は、愉しすぎる。
これだから、映画を観る事は止められない・・、と思うのである。
一言:私は決して、シネフィルではない。
世の中には、想像を超えるシネフィルの方々が多数、存在する。
当たり前であるが、映画とは、読書、ロックと並んで蠱惑的な、不変の文化なのである、という事をこの作品を観て再認識した。>