地中海に浮かぶイビサ島の伝説的DJ、ジョン・サ・トリンサを描いたドキュメンタリー。世界一のパーティアイランドとして知られるイビサ島では、夏場はヨーロッパの有名ナイトクラブが店を開け、世界中からスターDJが集結する。そんな中、イギリスから移住したジョン・サ・トリンサは、島の最南端サリナスビーチの小さな海小屋で25年間、パーティサウンドとは一線を画す“バレアリック・ミュージック”を紡ぎ続けている。ジャンルレスで物語性にあふれたイビサ発祥のバレアリック・ミュージックは、自由で垣根のない生き方をする彼の精神そのものだ。映画ではそんな彼の生きざまと島に息づく多彩な文化を、息をのむような映像とバレアリックな音楽にのせて映し出す。台南生まれ新宿歌舞伎町育ちの映像作家リリー・リナエの長編初監督作。
太陽と踊らせてコメント(7)
◼️感想
・ジョン・サ・トリンサが何時も浮かべている柔和な笑顔が、素敵である。
・若い頃の苦労話をする時も、恥ずかし気な笑顔である。
ー 40歳を超えると、人間は人格・性格が顔に出ると思っている。
ジョン・サ・トリンサの柔和な笑顔の裏に隠された、若い頃の苦労がポツリ、ポツリとナレーションで語られる。ー
・彼の倉庫にある、多数のLP盤。だが、彼は”お皿”を回さない。予め、曲をダウンロードして、彼独特の選曲で流すのである。
ー ここら辺は、もう少し見せて欲しかったなあ・・。ー
・ジョンの生み出すバレアリック音楽(ジャンルミックス音楽)を紡ぎ出す、粗末なブースの前には、イビサ島のビーチが広がっている。のんびりと波と戯れる人々。
彼の流す音楽を楽しむ人々へのインタビューも良い。
・ジョンの紡ぐ選曲の自由さは、彼自身の生き様にも重なっているようだ。
<コロナ禍が終息したら、地中海に行ってジョンのバレアリック音楽を楽しもうかな😃。
そして、ジョン製作のカセットテープを買って来よう・・。
素敵な、ヒーリング映画である。>
彼のDJを目当てに毎年島を訪れる人たち、競争社会に疲れイビザに移住した元・建設業のおじさん、かなり高齢のイラン人音楽家などのインタビュー映像を交えて、ジョン自身の人生が語られる。彼の経歴は元々70年代のロックミュージシャンに的を絞った写真ジャーナリストだったらしい。DJへの転身のきっかけは空き巣に入られたこと。大量のレコードは持って行かれなかったかららしい。ロンドンでDJをしていたが、友人と一緒にクルマに一杯のレコードを積んでイビザ島に越してきたが、ほどなく内輪揉めで一人残ることになり、途方に暮れていたが、ドタキャンしたスペイン人DJの代わりをビーチの親分から頼まれる幸運に恵まれる。
人懐っこい笑顔のジョン。あおり系のDJスタイルではなく、豊富な音楽知識、曲の繋ぎのソフトな語りが絶妙で、SA TRINXA から発信されるラジオ番組は地元住民のファンも多い。
しかし、最近は大規模資本が進出し、ヨーロッパのクラバーのメッカの島も様子が変わって来てしまい、ジョンのイビザ島への情熱も島の変化とともに薄らいでしまったようだ。そんなジョンが落ち込んだときに聴くのはブルースだと言う。仕事が減ったり、DJの要求が変わって来てしまったのかもしれない。ひとつの時代の終わりに対する郷愁を美しい海辺の夕陽の映像が引き立てる。
でも、ジョンはインドネシアやNYの海の家でもバレアリックでDJ業をして、稼いでいるようだ。
台南生まれ新宿歌舞伎町育ちの映像作家リリー・リナエの長編初監督作。
イビザ島のすぐ南には切り立った断崖絶壁の大きな山と低い丘からなるフォルメンタル島がある。入江や多くのビーチが2つの丘の間に広がり、今でもヌーディーストビーチがあるらしい。中世からの古い建造物は世界遺産に指定されている。一度、行きたいなぁ。