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ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポコメント(20)
自分勝手な夫婦とそれに振り回される周りの人達の話、にしか思えません。
本来、男女の愛とか人間なんてそんなものかもしれませんが。
キャストは大好きなのに、観終わった後になんかイライラ感が残ります。
松たか子、イイんですよ。
イイんですが松たか子を引き出した浅野忠信が凄いと俺は思います。
伊武雅刀と室井滋コンビは期待通りで本当に良かった。
夫婦で敬語で会話したりするとこは純愛モノの良さが出てました。
愛の形は色々あって良いと思いました。
疲れ果ててやつれているはずが、いきいきとしてぽっちゃり元気はつらつの松たか子。
悲惨な人生のはすが、まるで朝ドラのようなすがすがしさ。
しかしながら、二人の名演技には目を見張らせられました。
脇役の堤真一と妻夫木聡も良かった。
松さん演じる、妻のサチ。
一見おとなしそうで、出来の良い妻ではありますが、
「したたかだよなーーー」(あくまで良い意味で、です)と思う点も多々。
大谷との出会いのエピソードにしても、
金を取り返しに来た酒屋の夫婦の話に思わず笑ってしまうところにしても、
さらには、借金の代わりにその店で勝手に働き出し、
すっかり人気者になってしまうところにしても。
でも、そうゆうしたたかさがなければ、
ただ夫の横暴をガマンしている、不憫で哀れな女になってしまうはず。
かといってやりすぎれば、ただのはすっぱな女になってしまう、、、
その辺りの微妙なさじ加減を、さらりとカラリと、
「はからずもしたたか」な女を演じています。
ふと、以前、たしか『有頂天ホテル』のときに、
監督の三谷幸喜さんが、
松さんについての感想をこんな風に言っていたのを思い出しました。
いわく、
「松したたか子」…
そんな、たぶん「ナチュラルしたたか」が生きていたのでしょう(これも、良い意味で)。
口紅買うからの流れはすごい映画的だと思う。弁護士のビルの前で紅をひく。開口一番「お金、ありません」前半に椿屋でチップだらけのシーンを作り「私、お金になるんですね」を入れておいて。
自分を見捨てたどころか裏切ったとさえも思える弁護士、無関係だったのに自分を助けてくれた大谷という男の対比。佐知の過去のエピソードも善悪を超えたところで語られている。
この加筆された部分で複雑な感情を呼びおこして心に残る作品となった。浅野忠信と松たか子の演技も素晴らしい。