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ナワリヌイコメント(1)
ロアー監督による主人公ナワリヌイへのインタビューから本編は始まる。監督が「まず、こんなことを聞かれるのは嫌かもしれないけれど」と前置きをして...
Roher: What message do you leave behind to the Russian people?
Navalny: Come on, Daniel. No. No way. It's like you're making a
movie for the case of my death. Like, again, I'm ready to
answer your question, but please let it be another movie.
Movie number two. Like, let's make a thriller out of this
movie, and in the case I would be killed, let's make a boring
movie of memory.
この映画の特徴は、現実離れをしたスリリングさと実際に起こっている場面を捉えて見つめるそのタイムリーさが合わさった時、彼のカリスマ性を遺憾なく発揮したドキュメンタリー映画に仕上げている... でも映画の内容があまりにもジッピーに軽やかにしかもドラマティックに進んでいくシナリオにまさか、すべてフェイク動画なんて事がないのか? ...と疑いを持ちながら観ている自分もそこにいる。
“The triumph of evil is for good people to do nothing.”
彼は18世紀の哲学者のありふれたと言い方をすれば、けなしているようにも聞こえるので聞き慣れた言葉を引用していると言えばいいのか?それはともかく、
この映画には大きく2つのイベントがある。
まず第一に彼が移動中の飛行機内でVXやサリンの5~10倍の威力のあるバイナリー・ウェポン、ノビチョクで昏睡状態となり病院に運ばれるリアル感がこの映画の出だしの部分で特に際立ち、しかも病院に運ばれた彼を気遣うユリア夫人や彼の支援者たちが面会をしようにもいつの間にか彼らよりも先にいる迷彩服を着た数人の男たちが病院の通路をふさぎ、通るのを邪魔をしている。その上、身分証や制帽など所属している証となるものを一切身に着けてはいない... その事がこの映画が持つ一種の不気味さを自然と感じてしまう。
そして次に “a nice Bulgarian nerd with a laptop” と形容されるようなベリングキャットの調査ジャーナリスト、クリスト・グローゼフとナワリヌイが暗殺未遂を実行したロシアのFSBエージェントを特定するために動き出すところにジェームズ・ボンド張りなスリリングさも垣間見ることができる... 少し言いすぎでした、それほどでもありませんけど...何か?
They are so scared of Alexei that they had to lock down everything
around here. The most important thing Alexei said today is, he's
not afraid. And I'm not afraid either, and I urge you not to be afraid.
Thank you very much for your support.
映画もラストに近づき、ユリア夫人が夫のナワリヌイが官憲によって連行された時、マスコミ向けの声明を出している。
"Putin's Palace: History of the World's Biggest Bribe." をビデオで暴いた代償が
In his first month at Pokrov Penal Colony No.2, Navalny narrowly
survived a hunger strike. He faces up to 20 years in prison.
矯正コロニーNo.2に20年の刑を言い渡されたナワリヌイがニューズウィークの取材によると弁護士はもちろんの事、家族さえも彼の所在が分からなくなっていると映画とは別に伝えている。(6/14/22の午前7:59の取材より)
よそのしかも共産圏の国の話なので、軽く考えるとしたら、不謹慎かもしれないけれどもナワリヌイの「善人≒英雄」という描き方は、彼が少なくとも何かをしようとしている「善人」であると視聴者に思わせ、たぶらかせるようにも見える。しかも、他の点では優れたドキュメンタリー映画としての欠陥も存在する。その事が、ナワリヌイを唯一のプーチンの代わりの選択肢として描写し、彼のチェックされた犯罪歴を無意味に減らし、本編では描かないことで、仮にナワリヌイが大統領だったとしたら、ロシアは単に独裁者の首をすげ替えるだけの事とも思える。ロシア人やウクライナの人達は言葉の選択が悪いかもしれないけれども結局のところ「前門の虎、後門の狼」のようで最後は竜穴に落ちちゃいましたとさ?
エンドロール・クレジット前にプロローグの時に監督がナワリヌイに質問した同じ内容をエピローグとして... 彼の真実の心の内と信じたいけれども!?
Roher: Alexei, if you are arrested and thrown in prison or the
unthinkable happens and you're killed, what message
do you leave behind to the Russian people?
Navalny: My message... for the situation when I am killed
is very simple, not give up.
Roher: Do me a favor, answer this one in Russian.
Navalny: Listen, I've got something very obvious to tell you.
You're not allowed to give up. If they decide to kill
me, it means that we are incredibly strong. We need
to utilize this power, to not give up, to remember we
are a huge power
that...
is being oppressed by these bad dudes. We don't
realize how strong we actually are. The only thing
necessary for the triumph of evil is for good people
to do nothing.
So don't be inactive.(本編では彼はロシア語で語りかけている)
この映画の利点というか、素晴らしい一面があるとするなら、映画製作陣としてのロアー監督とスタッフ、それに渦中の本人であるナワリヌイとの信頼関係を短期間で作り上げた事がこの何とも言えない国家的謀略と暗殺未遂という心の弱いものからすると疑心暗鬼になりそうなスレッドを真正面から切り込んだことで映画自体が資料としての映像という歴史的証言者となった賜物なのかもしれない。
だからインフルエンサーと危険人物との紙一重さがシナリオに明確に反映されているかが、重要で、見る視点が違い少しでも狂ってしまうと映画の質感も変わってしまう。