「マルチュク青春通り」のユ・ハ監督が、暴力と欲望がうずまく卑劣な世界で生きる三流ヤクザの運命を描いたノワールアクション。三流暴力団のナンバー2として冴えない人生を歩んでいたビョンドゥは、組織の黒幕であるファン会長から、ある検事を暗殺すれば将来を約束すると提案される。検事を殺害して組織での成功を手にした彼は、初恋の女性ヒョンジュや映画監督になった幼なじみのミンとも再会し、満ち足りた毎日を送りはじめる。しかし、ある秘密をミノに告白したことから、ビョンドゥの運命は思わぬ方向へと転がっていく。TVドラマ「バリでの出来事」のチョ・インソンがこれまでのイメージを覆し、野心に燃える危険な男を熱演。共演に「マイ・ブラザー」のイ・ボヨン、「バンジージャンプする」のナムグン・ミン。
卑劣な街コメント(2)
黒幕であるファン会長は検事からゆすられている様子。誰か検事を消してくれないかと漏らすが、ヤクザであっても検事を殺すのはヤバイと、誰も乗り気ではない。ビョンドゥは金のため、兄貴分を出し抜く形でこっそりと検事を殺してしまうのだ。やがて兄貴分の男もその事実に気づき、ビョンドゥを殺そうと計画するが、先手を打って逆に殺してしまう・・・しかも妹の結婚式という日に・・・。忠誠を誓ったのはファン会長に対してだけ。ビョンドゥは上下関係の義理なぞは蔑ろにして、金のために手を汚すのだった。
内部抗争も他の暴力団との抗争も日本のヤクザ映画とそっくりなのですが、ここにヤクザ映画を撮りたい映画監督が絡み、サスペンスのようなプロットも侵入し、一方で、初恋の女性に愛の告白をするという純愛路線も入ってくる。基本的には下級ヤクザの虚しさや、下克上のような権力の虚しさ、義理とは口先だけのものであるとヤクザを否定するような内容。恩を仇で返すほどではないにしろ、一瞬の台詞や態度で信頼を失うと、矛先は自分に向かってくる描き方も面白い。かろうじて家族(一緒に食事をする舎弟など)の大切さや旧友との友情が残ってるかと思わせておいて、そこにも裏切りがあったり・・・
ロータリー組、三叉路組、毒ヘビ組などと、ヤクザの組の名前に笑ってしまいそうにもなりましたが、どことなく完璧じゃないヤクザばかりだったのも人間味を感じさせる。階級社会はヤクザ世界に限ったことではないし、同じような人間関係はどこにでもあると考えると、ちょっと怖いような・・・