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ストックホルムでワルツを プロット スウェーデン 11月29日 2014 劇場で
白い犬とワルツを プロット 日本 04月13日 2002 劇場で
戦場を駆ける男 プロット アメリカ 03月21日 1952 劇場で
娘は戦場で生まれた プロット イギリス・シリア合作 02月29日 2020 劇場で
ラスト・ワルツ プロット アメリカ 04月14日 2018 劇場で
グレート・ワルツ プロット アメリカ 01月01日 1900 劇場で
戦場でワルツをコメント(16)
この作品は、イスラエルのレバノン侵攻と、その際におこったパレスチナ難民村への虐殺という事件を、参加していた兵士が失われた記憶をもう一度紡いでいきながら描くという内容だ。そのために、その時の同僚たちに会いに行くのだが、虐殺という非道なことをした人間を実写映像で画面に出したことで、ゲリラからの報復があることを恐れたのではないかと思われる。また、この虐殺事件を指示した幹部たちが、今のイスラエル政府にまだ存在している、ということも製作側は気をつかってのアニメ版作品、と言うことではないかと思う(だから、当事者の責任回避的な表現方法だ、という非難は免れないのは致し方ない)。
そして、当時のレバノン侵攻の映像があまり使えなかった、という物理的な事情もあったと思われる。ところが、それでアニメ化した戦闘シーンがこの作品に素晴らしい効果を見せた。
アニメでの戦闘シーン、回想シーンはそれほど美しいと言えるものでもなく、実写ほとリアルさは感じられない。しかし、実写以上に観る者に戦争のむなしさやむごたらしさを感じさせられるアニメ映像だった。
私は、この作品の戦闘シーンを見ながら、原爆の惨状を描いた絵画や、ピカソのゲルニカを思い出していた。湾岸戦争以降、戦闘の映像はよくニュースで見るが、ほぼすべてが無機質で、ゲーム映像のように平面的にも感じる。しかし、写真や絵で戦争を活写すると、撮った者、描いた人間の心が込められているので、キャンバスにとらえられているものから訴えかけてくるものがある。この作品でも、題名の戦場でワルツを踊るように機関銃を乱射するシーン、巨人の女性にまたがって海を漂いながら自分が乗ってきた船が炎上するのを眺めるシーンなど、戦争が人間にどのような幻想や狂気をもたらすのかを見る者に何度も訴えかけている。
その訴えの根本は、どこにあるのかを探りながら見ていたら、ラストにいたるところで衝撃的なセリフが出てきた驚いてしまった。それは、虐殺された村に取材にきていた記者が「ナチの収容所のような...」と言うところだ。
この作品は、失われた記憶をもう一度蘇らせてみようとする内容だが、それは今のイスラエルそのものも意味している。はっきり言うと、イスラエルが今パレスチナ側にしていることは、ナチがユダヤ人にしてきたことと、そう変わりはない。しかも、昔に行ってきたレバノン侵攻も、難民村虐殺も、政府の記憶から、イスラエル国民の脳裏から消えてしまったのかと思うくらい、今のイスラエルは過去に対して悔悟もなければ検証もしない。だから対照的に、この作品の監督は、過去を見ないと未来も見えてこない、との思いから、あの国家的犯罪をもう一度見直し、そしてイスラエルの未来を見つめようとしたのではないかと思う。忘れてはいけない過去だからこそ、それを見つめ直す気持ちがないと、イスラエルも国民も世界から取り残されるのでは、という危機感を監督は常日頃から感じていたのではないか。
私は、映画を見終わったあと、冒頭の数十頭の犬が怖い形相で走るシーンは、ゲリラとかではなく、ナチ以来、また再びあるかもしれない危機を表現しているように思えてならなかった。
人間の深層心理や戦争の実態をあぶりだすドキュメンタリーと、創造力あふれるアニメーションの融合…映像は確かに面白いけど、これってアニメである必要ある?と思いながら見てた。もちろん実写でもいけただろうけど、それだとここまでの衝撃はなかったはず。
あのラスト…あれのためにアニメである必要があるのかなとすら思った。
最初に観たときは、私の勉強不足もあり何がなんだかわからなかった。
レバノン内戦は、複雑でいろんな国が軍事介入してくるのである程度、知識を入れてから観たほうがいいかもしれない。
一体誰が敵で何のために戦うのか?よくわからない。でもこれは、登場するイスラエルの青年兵も一緒だ。
ただ恐怖しかなく動くもの全てに発砲していく青年兵たちそして犠牲になっていくのは、一般市民。
そしてかつての戦友を訪ねる事でわかってきた数々の虐殺行為。
そして最後に起こる最大の虐殺行為……。
アリは無理矢理忘れようとしていた自分達の犯した罪を。
基本的にこの映画はアニメーションで描かれているが最後の事件は、実際の映像で観せられることになる。
ユダヤ人の彼等も虐殺されてきた歴史があるのに結局、彼等も同じ事をしている。
戦争をアニメーションで描くのはやはり斬新。
旧友と再会しその時の記憶が曖昧なことに気づいた主人公は、知り合いの心理学者や当時軍にいた人、ジャーナリストなどの話を聞き、段々と記憶を取り戻していく…
アニメ映画ではあるが内容は監督自身の体験であり、ドキュメンタリーである。
登場人物が語る証言、主人公が思い出す記憶全てが地獄絵図。この世で起きているとは思えない光景の数々。実写で撮っても過激すぎて「ま、映画だしね。ちょっと誇張してるでしょう」と脳が解釈してしまいそうだが、アニメーションで表現することによってすんなりと見せ、最後に実際の映像を映し出すことによって「アニメだったけど全部本当のことだったんだ」と理解させることに成功している。