ベロニカ・フォスのあこがれ

極めて美しい画の連続。実在した女優ジビレ・シュミッツの数奇な人生をモデルに描かれたヴェロニカ・フォスの人生。かつてのナチス政権下のドイツで成功を収めた元スター女優。しかし敗戦後、時代は激変し、冷戦下のドイツで落ちぶれた女優人生を送っていた。アイゼンハワー、NATO、モルヒネ、カントリーソング、ハリウッド映画、近寄るアメリカの影。1950年代のドイツ。搾取されつづけるヴェロニカ・フォスの人生。モノクロでの表現やシーンの切り替わり方など演出は当時のドイツの娯楽映画を模倣し皮肉っている。「マリア・ブラウンの結婚」に続くドイツ共和国3部作の第2部で、当時のドイツの社会情勢とヴェロニカ・フォスの物語が巧みに絡み合った、かなり思慮深くて奥深い内容の作品。「人間を自由にする芸術は自由でなくちゃ。」というヴェロニカ・フォスの台詞。これぞニュー・ジャーマン・シネマの旗手というようなファスビンダー・イズムが炸裂している遺作前の一作。