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グッド・ウィル・ハンティング 旅立ちコメント(20)
誰もが羨む才能を彼は何とも思っていなかった。
なぜなら彼は、良き師がいて、良き友がいて、愛すべき人がいたから。
良い映画すぎるやん。
印象の残った台詞 「悲しみは忘れてた喜びの価値を思い出させる」
どんな人生を送ることが幸せなのか?
努力を重ね、素晴らしい賞をもらい、名誉を手にした人生
自分の人生を、愛する人に捧げる人生
稼ぎは少ないが、友人とバーで一生バカやってる人生
きっとどれも人によって"幸せ"な人生だ。どの時点で、どんな理由で、どんな選択をして、その先でどんな人生を歩むことになるか、ライフコースはそうやって人の数だけ分かれている。だから『"幸せ"な人生とはこういう人生だ!』なんて定義することはとてもできない。
ウィルの持つ数学の才能は、数学者として名を馳せたい者からすれば、喉から手が出るほど欲しいものだろう。彼らにとっては友人とクラブやバーでバカやってるウィルの人生なんて"クソ"で何も生産しない"無駄"なものかもしれない。
ところが、友人とバカやってるのが何より"楽しく"て"幸せ"なウィルにとって数学の才能はゴミも同然なんだろう。
この物語における主要人物のウィル、ランボー、マグワイアの3人は各々が自身の人生観を初めからしっかりと持っているが、その3人がぶつかり合い、お互いの人生観の内を明かすことで各々が"自分の人生"とは"別の人生"が、無数に存在していることに気づく。
ランボー博士は序盤、ウィルを数学者として成功させるために、彼のライフコースを決め、彼の人生を"乗っ取ろう"とするが、マグワイアに『彼の人生は君の人生ではない。』とひと蹴りされる。そんなマグワイアも人生をかけて愛した妻を病で失った悲しみから、彼自身の人生を見失ってしまっていた。つまり、マグワイアは"今は亡き妻の夫"として立ち止まり、"マグワイア"としての人生を見失っていたのだ。ウィルは、『もう誰も愛せないのか?進めないのか?素晴らしい人生哲学だな。』と、"自身の人生"を見失っているマグワイアを皮肉る。ウィルは孤児であり、養父からの虐待も経験して以来、"愛されている時、いつの日か捨てられる恐怖"を感じるようになっていた。そのため愛されても、"捨てられる前に自ら捨てる"ようになり、絶対に自分を見捨てない友人を必要以上に頼りにするようになっていた。そんなウィルに、彼の友人は『お前が40年経ってこの街で俺たちとまだこうやって働いていたら、お前のことをぶっ殺してやるからな。』と一言。
他人の人生を誰かが決めてしまえば、
自分は、他人が決めたライフコースに、ただ沿って生きるだけの奴隷に成り下がる。私はそれを"幸せ"だとは思わない。
人は皆、"誰かの何か"だが、それ以前に"自分"であり、"自分の人生"を生きており、"自分のライフコース"決定することができるのは、"自分"だ。
ただし"自分"として、"誰かの人生を決めること"や、"誰かに規定された人生を生きること"はできなくとも、
"誰かの人生を変えるきっかけを与えること"はできると私は考えている。結末として、ウィルもマグワイアもランボーも、誰も自分の人生を押し付けていない。きっかけを与え続け、各々が自ら決断を下す。
"人との出会い"というのは、そのきっかけを絶えず私達に与え続けているのではないだろうか。
本当に心から人と向き合うのはいかに難しいか。
ヒューマンドラマと呼ばれるジャンルの映画の中では最高峰だろう。
是非多くの人にお勧めしたい。
天才的な頭脳を持ちながら、過去のトラウマから心を閉ざし非行に走る青年ウィルが、同じく心に傷を抱える心理学者ショーンと出会うことで人間的に回復し成長する姿を描くヒューマンドラマ。
監督は『ドラッグストア・カウボーイ』『マイ・プライベート・アイダホ』のガス・ヴァン・サント。
主人公ウィルを演じるのは『戦火の勇気』『レインメイカー』の名優マット・デイモン。
ウィルの親友チャッキーを演じるのは、『バッド・チューニング』『チェイシング・エイミー』のベン・アフレック。
友人の1人モーガンを『誘う女』『チェイシング・エイミー』の、ベン・アフレックの弟であり後のオスカー俳優ケイシー・アフレックが演じる。
心理学者ショーンを演じるのは『ミセス・ダウト』『ジュマンジ』のロビン・ウィリアムズ。本作でオスカーを獲得。
元は学生時代のマット・デイモンが授業の為に執筆した戯曲であり、それを幼なじみの友人ベン・アフレックに見せたところ、2人で映画用の脚本として作り直すことになった。
第70回アカデミー賞において、脚本賞(デイモン&ベン・アフレック)と助演男優賞(ロビン・ウィリアムズ)を受賞。
第55回ゴールデングローブ賞において脚本賞を受賞。
第3回放送映画批評家協会賞において、オリジナル脚本賞を受賞。
大きな事件が起こるわけでもなく、1人の青年の日常を淡々と描いていく作品。
地味なテイストの作品だが、ウィルの心情が変化する様が丁寧に描かれているため、物語に引き込まれていく。
繊細な青年ウィルを演じたマット・デイモンの演技が素晴らしい。
アカデミー賞を獲得したロビン・ウィリアムズの演技も良い。
心に傷を負った男性を陰のある演技で表現しているうえ、コメディアンとしての資質を活かした笑えるシーンも健在である。
アカデミー賞をはじめとして、数々の賞を受賞した脚本を書いたのは無名時代のマット・デイモン。ヒロインがハーバード大学に在籍しているのは本人もハーバード大出身だからだろう。
ベン・アフレックとマット・デイモンは少年時代からの親友らしいが、その2人がハリウッドの第一線で未だに活躍しているというのは、よく考えると凄い。
非常に良くできている映画なので、特にケチを付けるところもないのだが、少々自分と映画との間に距離を感じてしまうのは、主人公があまりにも天才すぎるからかも。
数学の天才というだけでも物凄く濃いキャラ付けなのに、歴史や芸術にも精通しているという天才の中の天才。
その為、アメリカ中の大企業や国防総省の情報機関NSAからオファーがくる。
ウィルがあまりにも現実離れしすぎた天才の為、凡人の自分にはちょっと感情移入しづらいと感じてしまった。
あと、ウィルの周りにいる人たち。教授や友人や恋人、みんないい人すぎ。
ウィル、お前十分恵まれてるじゃねえか!!とか思ったりして。
むしろ自分はショーンというキャラクターに惹かれた。
妻を失った悲しみを癒すことができていない中年心理学者。
彼がウィルをカウンセリングしていくうちに、彼自身も癒されていくという設定は非常に良いと思う。
…が、ウィルに対してショーンの描写が極端に少ない為、ショーンが回復していく過程が分かりづらかったのはちょっと勿体ないな、と感じてしまった。
もっとウィルとショーンの心の交流を全面的に描いてもよかったのかも。
クライマックスシーンは確かに感動的なのだが、ちょっと待てっ!
友人たちはウィルの就職祝いとして車をプレゼントしたのに、結局ウィルは旅に出てしまってますけど?しかも親友のチャッキーにも何も言わずに。
そりゃ、あの友人達ならウィルが就職しなくても文句言わないだろうけどさ、なんか違和感ありますよねぇ。
とまぁ、何点かケチをつけてしまいましたが、基本的には良く出来た作品で、誰にでもお勧めしやすいタイプの映画かな。
ハリウッド的ではない、地に足が着いた上品な映画。名優達の若い姿を見ることができる良作です。