レディ加賀
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02月23日 劇場で
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1917 命をかけた伝令コメント(20)
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第一次世界大戦中、イギリス兵であるスコフィールドとブレイクの二人は重要な指令を最前線の部隊に伝える任務を託された。重要な指令とは明朝に行われる攻撃の中止命令であり、このまま攻撃してしまうとドイツ軍の罠に掛かり、1600人の命が失われる。その1600人の中には、ブレイクの兄もいた。どこに敵が潜むか分からない敵陣の中、二人だけの行軍が始まるのだった。
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この映画の特徴は何と言っても「全編ワンカット」ということでしょうか。しかし実際には「ワンカット風」ですが。DVDに付いていたメイキング映像でも明かされていますが、実際はワンカットで全て撮影しているのではなく、長尺カットで撮影された映像を上手いこと合成してワンカットに見せているようです。
この「ワンカット」というのが、戦場のシーンの緊迫感を見事に表現していたと思います。画面が切り替わることがほとんどなく、スコフィールドとブレイクの二人の後を付いていくようなアングルの映像が続くため「自分が伝令部隊の3人目になったような気分」が味わえます。
カメラのアングル・演者の立ち位置・セットの設置位置までもが完璧に計算されつくしていて、一発撮りとは思えない画角や構図やタイミングに「おぉ」と声を上げてしまうシーンもありました。
メイキング映像を観ると、その凄さが良く分かります。常に歩き続ける二人を撮影するために照明器具を設置することができず、自然光での撮影。また、天候が変わってしまうと違和感が生まれてしまうため、撮影時間の大半は「天気待ち」状態。撮影に適した気象になったら撮影をし、天気が変わったら天候が回復するまでひたすらにリハーサルを繰り返すというタイトなスケジュールで、よくここまでの作品ができたなと、本当に感心します。
戦争映画とは思えない、自然豊かで美しい情景描写も多いため、風景を見ているだけで楽しめます。
ストーリーも実に良かった。若い二人のイギリス兵が、時にぶつかりあい、時に協力し、危険な戦場を進んでいく描写も良かったし、登場シーンの少ないキャラクター達も、戦場を生き抜くために精一杯戦っていたり誰かを守るために行動していたり、一人ひとりにドラマがあります。
そして、予告編でも使われていたスコフィールドが大砲の爆撃の中を全力で疾走するシーン。予告編で何度も観たシーンなのに、あんなに感動するとは思いませんでした。あのシーンでは本当に鳥肌が立つくらいの感動を覚えました。
戦争映画ですが、血が飛び散るようなグロテスク描写はほとんど無く、数少ない出血シーンでも出血した部分が見えないように撮影されていますので、グロが苦手な方でも問題なく鑑賞できると思います。
本当に面白い映画でした。劇場で観られなかった事を少し公開しています。
オススメです!!!
最近戦争映画を観る機会が多いが、なかなかスリルあった。
片や『プライベート・ライアン』のような究極の戦争映画がある一方、本作は戦争の悲惨さを描きつつ、その画面設計や空間設計、さらにはリアルタイムで映画を紡ぐ時空間設計の面でも目を見張る芸術性に満ちていた。戦争映画の中で芸術性というものが成立するのかどうか懐疑的だったが、本作は極めて巧みな角度でそれを成し遂げていたように思う。
普通の映画では、様々な角度から撮った映像によってそのシーンに関する情報や景色を観客が受け取る。しかし、本作はそれらをあえて制限するという挑戦をしてしまったため、「周りの景色が見えない」「どんなところに彼らがいるのか分からない」という映像的に情報不足な状態で観客が鑑賞を続けていかないといけないという苦しい状況ができてしまう。
また、カメラワークに制限ができたため、様々なカットで視覚的に楽しませる(飽きさせない)ということも比較的できなくできなくなっている。特に会話のシーンでは、それぞれの顔をアップで撮ることがということがほとんどできないので、繊細な表情が伝わりづらい。これは、上述の情報不足の面でも言えることだ。
ただし、この撮影方法のおかげで臨場感、没入感を得るということは間違いないだろう。主人公たちに、カメラが数時間絶えず密着しているという状態が、我々観客にその現場にいるような感覚を与える。主人公があらゆる困難を乗り越え、戦闘中止の伝達を完遂したときには、本作でしか感じられない安堵感があった。それだけ彼らの置かれた状況に没入できた、ということの表れだろう。
「危険が待ち受ける敵の陣地を突き抜け、遠方の味方に重要な伝令を行う」というミッションを受けるが、その不可能にさえ思える過酷さが、重さを増して視覚化されていく。
私が主人公だったら、「もうやめようかな」という選択肢さえ頭をよぎってしまった「体感型・走れメロス」のような作品。
バーチャルなゲームのクリアといった世界とは違い、アナログな装備と、死体の手触り感や臭いさえも伝わってくる状況に全身の感覚が奪われる。戦下における、たった1つの任務なのに見る側は何度も打ちのめされる。
本作のリアリティの源泉は革新的な映像表現だけでなく音楽も重要な役割を果たしていて、文字通り「命をかけた伝令」である本作を陰ながら寄り添い盛り上げてくれている。
主人公が真っ直ぐに進む様を盛り上げるシーンなど、本作の醍醐味でもある各々の場面での感情の揺らぎを表現する巧みな「オーケストラ」としての調和が素晴らしい。
僅か1日という期間の中でも過酷過ぎるが故に出てくる人間らしいエピソードに心を打たれながらも、映像の魔力により自分自身もその場に存在しているかのような気持ちになる。そのため戦争というテーマの重さがずっしりと心と体にのしかかっていく。
見終わった後は、戦争の実態を伝え続けるためにも戦争をテーマにした本作のような名作映画はいつまでも登場してほしいと強く念願した。