スパイ容疑で逮捕された80代の老女の数奇な実話をもとにしたジェニー・ルーニーのベストセラー小説を「恋におちたシェイクスピア」のオスカー女優、ジュディ・デンチ主演で映画化。夫に先立たれ、仕事も引退し、イギリス郊外で穏やかな一人暮らしを送っていたジョーン・スタンリーが突然訪ねてきたMI5に逮捕されてしまう。彼女にかけられたのは、半世紀以上も前にロシアのKGBに核開発の機密情報を漏えいしていたというスパイ容疑だった。ジョーンは無罪を主張するが、外務事務次官のW・ミッチェル卿の死後に見つかった資料などから、彼女の驚がくの過去が次々と明らかとなる。ジョーン役をデンチ、若かりし頃のジョーン役を「キングスマン」のソフィー・クックソン、ロシア人の恋人レオ役をテレビシリーズ「女王ヴィクトリア」のトム・ヒューズがそれぞれ演じる。監督はデンチの舞台作品の演出を数多く手がけたトレバー・ナン。
ジョーンの秘密コメント(20)
いきなり主人公の連行から話は始まり、取り調べで、外務事務次官のウィリアム・ミッチェル卿の死後にみつかった、ケンブリッジ大学の資料のことを告げられて1938年からの出来事を回想していく。
当時のイギリスとソ連との関係からなるバリバリ共産主義の友人達との出会いと交流や、主人公の専攻と携わり活躍する仕事とのことか、全て計算?KGB恐ろしすぎる…。
均衡と竦みが先か恋情が先か、信念か感情か、どこまでが演出でどこまでが事実かは判らないけれど、ある意味女性らしい強い意志と流されやすい弱さを合わせ持つ主人公の行ったことは、それがどこまで影響したかも判らないし、知っていたらそれ程感じないだろうけど、衝撃の事実。
当時もの凄く恐ろしいことを行ったのは確かだけど、2000年にもなっての記者による赤だの何だの非難はただの炎上狙いか愛国心か。
それによって今の均衡があるのは事実だしね。
この様なことがあったことも、主人公のことも何も知らなかった自分には、意外だしスリリングだし面白かった。
どうでも良いけど、ゲバラマグカップは狙い過ぎw
-1938年 ケンブリッジ大で物理を学ぶジョーンに、様々な人々が近づいて来る・・。物語は当時と2000年、機密情報漏洩で逮捕された年老いた二人のジョーンを交互に描きながら進む。-
・ユダヤ系ロシア人、ソニア
-美しい女性だが・・。酔っ払ったふりをして、わざわざジョーンの部屋迄登って来たのかな?諜報活動のプロだなあ・・。怖い怖い、一番怖いヒトではないかな?-
・ソニアの恋人レオ
-イケメン、論説が上手い。ジョーン、イチコロ・・・。けれども、結局は"駒"に過ぎない・・。-
・ミッシェル卿
-外務省勤務だが・・・。2000年、全てを知っていた彼の死から、物語は始まる。-
■ジョーンの"若気の至り"
・レオにあっさり惚れたり(気持ちは分かる・・)、1941年核兵器開発機関の事務員として働き始まると、マックス・デイビス教授とカナダに共同研究に赴く船で"アッという間"に結ばれたり、・・
-周囲に"感化"されやすいヒトなんだね・・-
・で、"愚かしき"トルーマンが行った事をテレビで見て、自らが手を染めている事の恐ろしさに気付き・・
・一度は別れたレオに再び翻弄されるし・・
-息子ニックも怒り、呆れるよな・・-
〈ジョーンの行った事に対する考え方はイロイロあると思うが、彼女の"人としてのガードの甘さ"が、根本的な問題だろう。
2000年、記者達に対して"私のお陰で・・"というセリフには、説得力が私には全く感じられず、彼女も只の駒の一つでしかなかったのではないかな、強かな諜報機関にとっては。
ジョーンにとって、救いは弁護士の息子ニックの記者達に対しての言葉だろう・・。
この夏の終戦記念日の前に、苦い気持ちが残った作品。〉
第二次世界大戦中、ケンブリッジ大学で物理学を学んだ才媛ジョーンは原爆開発の機密任務に携わる一方、学生時代からの知人である共産主義者の友人や恋人との政治絡みの人間関係に翻弄される。2000年に逮捕された年老いたジョーンが取り調べを受けつつ回想する形式で当時の出来事が描かれる。
ジョーンは専門知識に関しては頭の回転がよいのだが、恋愛と機密任務に携わる者としての使命感と個人的正義の優先順位があやふやで、最後まで感情移入出来なかった。彼女は共産主義には賛同しないが、広島・長崎への原爆投下の映像を見て心が揺らぐ。周辺の男性との関係も彼女の心をおおいに揺らす。
公式ページに書いてあることだが、現実のジョーン、すなわちメリタは親の代からの筋金入りの共産主義者である。ソ連からの勲章も喜んで受け取っている。この事実をそのまま生かして、イギリス人のKGBやり手女諜報員がひたすら使命感のもとに暗躍するスパイ映画として作れば、ジョーンのポリシーが一貫したものになってエンターテイメントとして違う面白さがあったかも知れない。
とはいえ、ジュディ・デンチの説得力ある演技は見応えがある。ジュディの演じる現代パートは要所要所に挟まれるものの、トータルの出演時間はそんなに長くない。それでも、ジュディの静かな演技の中に、若き日の秘密と独りよがりの正義を胸に秘めたままジョーンが過ごした50年以上の月日が透けて見える気がした。また、若き日のジョーン役ソフィー・クックソンも好演で、クラシックで控えめな美しさがあって見入ってしまった。
トレヴァー・ナン監督はインタビューで、この映画が問いかけるものは「ジョーンのとった行動は正しかったのか」ということで、観客にこの問題を熟考してほしいと語っている。折しも日本では広島・長崎の原爆の日を迎える季節だ。毎年テレビで放送される原爆のドキュメンタリーなどとはかなり切り口の違う本作だが、被爆国の視点からジョーンが主張した正義を考察するのもまた意義深いことだと思う。
しかし、これがリアルの諜報の世界。
第二次世界大戦の収束への水面下での丁々発止や、列強のパワーバランスとsuper bombの開発競争を知るうえでもとても参考になる。
いまの感覚で考えると、「ソ連に機密情報を提供するなんて、彼女の行為はバカげている」、と思うだろう。しかし、当時の知識人は共産主義国家に現実の世界で実現されるユートピアをみていたし、西側陣営でも戦後の世界平和にソ連の貢献を期待する人も多かったはず。
当時の時代背景や思想を理解すれば、Joanの行動やその理由がみえてくる。
相互確証破壊による核抑止の理論は、暴力的な思考であり一歩間違えば世界の破滅を招きかねない。
しかし、現実の結果だけをみれば相互確証破壊は「機能」してきたともいえる。
劇中で彼女は「私は平和主義者だ」と胸を張って発言しているのが印象的だ。
色恋による調略は、カネ絡みと並んで古今東西の諜報活動にはつきもの。Joanも巧妙な罠にまんまとかかってしまう。工作員がターゲットの暮らしに「潜入」し、時間をかけてじっくりと信頼関係を築いていくプロセスにあらためて驚かされる。
第3次世界大戦が起こらないように平和のためになんですね!
クックソン可愛いです!
なぜ上映館少ないのでしょう?