ミューズは溺れない

7.1/10
合計15件のレビュー
ジャンル   プロット
ランタイム   82分
言語   日本語
地区   日本
書かれた   淺雄望
劇場で   09月30日 2022
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ミューズは溺れない プロット

インディーズ映画界の登竜門とされる第22回TAMA NEW WAVEと第15回田辺・弁慶映画祭の双方でグランプリに輝いた青春エンタテインメント。アイデンティティのゆらぎや創作をめぐるもがきなど、葛藤を抱えながらも前進しようとする高校生のひと夏をみずみずしく描いた。高校で美術部に所属する朔子は、船のスケッチをしている最中に誤って海に転落。それを目撃していた美術部員の西原が「溺れる朔子」を題材に絵を描いてコンクールで受賞したうえ、その絵が学校に飾られることに。さらに新聞記者から取材を受けた西原は、朔子をモデルに次回作を描くと勝手に発表する。悔しさから絵の道をあきらめた朔子は、代わりに新たな創作に挑戦しようとするが、物事が思うように運ばない。そんなある日、美術室で西原と向き合った朔子は、なぜ自分をモデルに選んだのか西原に疑問をぶつけるが……。監督は、大九明子監督などのもとで助監督を務めながら中・短編を製作してきた淺雄望。朔子役は主演作「この街と私」で注目された上原実矩、西原役は「ジオラマボーイ・パノラマガール」などで活躍する若杉凪。上原はTAMA NEW WAVEでベスト女優賞、若杉は田辺・弁慶映画祭で俳優賞をそれぞれ受賞した。田辺・弁慶映画祭の受賞作品を上映する「田辺・弁慶映画祭セレクション2022」(22年9月16日~10月6日=テアトル新宿/22年10月14~20日=シネ・リーブル梅田)にて劇場公開。

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ミューズは溺れないコメント(1)

lfpumoe
lfpumoe
存在の証明。誰もが一人前として生きていくことを望む一方、自分に足りないものが見えてくる。そんな部分を補うミューズが現れた時、輝き出す心の瞬間みたいなものがあるのだと思う。

『青葉家のテーブル』で好演を見せていた上原実矩さん、『ジオラマボーイパノラマガール』で仲良しなメンツの一人だった若杉凩さんが主演。そう発表されてからずっと楽しみにしていた今作。田辺弁慶映画祭でもオンライン鑑賞を我慢するほど。今回、こうして一足早く観れて本当に嬉しかった。そして、なんだか今は優しい気持ちになっている。

高校生によくある、「自分とは何か」といった疑問と不安。そこから生まれる感情のすれ違いを描く作品は確かに少なくない。しかし、今作が描いていくのは、その連帯感である。「誰かと生きる」ことへの軋轢、向き合い、正しさを次第に携えながら前に進む。実に現代的で優しく、その柔らかさも格段に出ている。大きな揺らぎを持たず、繊細な線を紡いでいく。これは監督の素晴らしいところ。ままならない感情を包括するような描き方に素晴らしさを覚える。

その中に携える、生き心地がなんとも快い。足の長い上原実矩さんのヒラヒラ揺れるスカートも、若杉凩さんの見つめる真っ直ぐな目も、一人で生きていたならば見ることもない世界が広がっているだろう。森田想さんの意地を張る感じもよく、コンパクトながらタッチの優しい映画となっている。ちなみに、川瀬陽太さんは激怒してないです。笑

弁セレのフライヤーにて、朝雄望監督は「映画に救われ生き延びてきました。」とコメントしている。そんな彼女が描いた本作で、私は先ほどより呼吸が深くなっていることを知るのだ。