ダウントン・アビー　新たなる時代へ

本作は、シーズン1（2010年）からシーズン6（2015年）まで続いたイギリスの人気テレビドラマ「ダウントン・アビー」の劇場版です。
この作品は基本的には「今から100年前が舞台」となっています。
具体的には、シーズン1は1912年が舞台で、シーズン2が1916年、シーズン3が1920年、シーズン4が1922年、シーズン5が1924年、シーズン6が1925年となっているのです。
そのため、例えば、シーズン1の冒頭では「タイタニック」の沈没事故が起こるところから始まります。
また、1914年には「第一次世界大戦」が起こるので、それも反映されています。
このように書くと、「何だ、かなり昔の話なのか」と興味を無くす人がいるのかもしれませんが、実は、「今から100年前」というのは、「現在」と密接に関係しているのです！
それは、2020年から突然、世界を恐怖に陥れた「新型コロナウイルス」が今でも問題となっていますが、この「新型コロナウイルス」の土地勘として、「今から100年前」に起こった「スペイン風邪」に近いという予測があったのです。
「スペイン風邪」は、のちに「インフルエンザ」だと判明していますが、当時は未知のウイルスとして約3年にわたり世界に蔓延し多くの死者を出しました。
そのため、「新型コロナウイルス」も3年程度は続くもの、という土地勘が役に立っています。
このように、本作は、今だからこそ実感しやすい内容になっている面があるのです。

実は、「ダウントン・アビー」の劇場版は日本で2020年1月に第1弾が公開されています。
私は、この作品を第1弾の映画で初めて知りましたが、その時は思い入れがなく、「なるほど、今から100年前のイギリスの上流階級らの物語なのか。そして、『ダウントン・アビー』とは、お城のような邸宅を意味していたのか」と知りました。
その後に新型コロナウイルスが蔓延し、改めて本作の意義深さを実感し、再び映画が公開されるのを楽しみにしていました。

まず、ベストなのは、ドラマを見てからの方が、間違いなく楽しめるでしょう。
ただ、私は、ドラマを見ずに、しかも、第1弾の内容も忘れている状態で本作を見てみました。
基本的な話は、ダウントン・アビーで映画の撮影をしたいというオファーが来て、映画のキャストやスタッフがやってくる、というものです。
一見すると華やかで豪華なお城のような邸宅でも、雨漏れなどが起きたりと問題も多く、メンテナンスの費用もままならない現実があるのです。
このように、本作は、意外に共感できる人物構成となっているのも人気の1つでしょう。
また、ドラマの段階から同性愛者の話が自然に出ていたりと、リアルさを探求しているのもいいと思います。
そして、あるシーンで「スペイン風邪」というセリフが出てくるなど、現在ともリンクしているのです。
さらには、映画も、「サイレント映画」から、音のついた「トーキー映画」へと移り変わる時代なので、映画の変革期の様相も知ることができるわけです。

強いて言うと、登場人物が多いため、ディテールが分からない点も出てきます。
ただ、そんな細かい点は気にせずに見ていても、大まかな話の段階でも十分に楽しいのです。
ドラマファンは間違いなく面白いでしょう。
ただ、一見さんでも楽しめるのは「さすが」の出来栄えと言えると思います。

胸が熱くなりました
愛と絆と喜びと品格、そして幸せが溢れてた
美しい情景と心揺さぶれられる音楽と
すべてにおいてパーフェクト

バイオレット様とイギリスのエリザベス女王が重なるところも、なんて粋なんでしょう(偶然というか、きっとバイオレット様が先ですよね)

この世に残さなきゃならない映画の一つです

Nope, I didn't see the first film, let alone the TV show. I didn't know what I was walking into here; and even in the first fifteen minutes I anticipated pure boredom. But unfolds a delightful Criterion Collection-style film on film, a British country-yard Singin' in the Rain that's a light hors d'oeuvre, a break from melodrama in all the other movies out. Dominic West is a great surprise here.

予告編､広大な緑の敷地に大邸宅ダウントン・アビーが出てきただけでワクワクした｡映画の１作目しか見ていないので､直前30分にぺぺっと予習しただけなのに十分楽しめて最後に感動した｡
亡くなった３女を誰もが忘れずに大切にしていて胸を熱くさせる｡
ドラマから見ているホントのファンの感動は計り知れない｡

TV版見てない人､映画１作目見てない(忘れてる)人も取りあえず
｢TV版10分でおさらい｣｢1作目4分でおさらい｣､相関図見て､Wikipedia流し読み､｢２作目の予告編｣｢2作目のストーリー｣で細かいことは分からなくても楽しめます。

ネタバレ！ クリックして本文を読む
"Violette, mon adorée."　　この言葉は作品として大きな二つの伏線となっている。

この映画に関して、撮影の監督の冴えなのか？テレビ・ドラマや前作と見比べると明らかにすばらしいほど鮮明でカラー・バリエーションも多彩で、しかもフィルム・スコアもそれを支えるように認知され始めたジャズと共に軽快に物語の演出にマッチしている。

スピンオフの特徴を活かしたアンサンブル・ドラマにさらに拍車をかけるようにダウントンの屋敷が映画撮影に使われることで起こるハプニングや少し、いけない恋心など当主の自覚が芽生え始めたマリーの物語とフランスでの先代のグランサム伯爵夫人であったヴァイオレットの秘密の恋物語を知ってしまう現グランサム伯爵であるグローリーの心のジレンマと葛藤のシナリオとのイギリスとフランスを舞台にした2つ異なる軸の物語が同時進行することでアンサンブルをより面白くするその多様さや話の展開の無駄のなさから映画の上映時間が短すぎるようにも感じてしまう。それと何と言っても．．．
前執事長のカーソン役のジム・カーターの実生活での夫人との共演のワンシーンやヒューズさんや料理長のディジーさんのエキストラとしての映画出演の衣装を見れば監督の遊び心満載な一品に仕上がっている。

だから、少し不安な事が．．．　意地悪バローは影を潜め、いい奴で穏やかだし、ヴァイオレットのクローリー家の長としての手厳しい一言すら登場はしない。だから、気持ちの悪いほどみんながいい人で話自体もムズイ問題が全てがとんとん拍子の様に解決し、丸く収まってしまっている。映画のスレッドのどこを切り取ったとしてもハッピーな一つの金太郎飴状態の小品となる価値ある物語となっている．．．　だから違和感を持ってしまう。それは？

アメリカのオンライン メディア: Insiderにロバート・クローリー役のヒュー・ボネビルが本作を含む『ダウントン・アビー』フランチャイズについてこう語っていた。
I suspect, on a practical level, it’s run its course now. I think that
was a good time to quit. I don’t know. I’m never gonna second
guess the future, but did think for a while, actually, yeah, why
not, let’s keep going. But I do think it could get a bit thin. I think
the second film was such a joyous one and such a good note on
which to end the story. And it does feel like it can end. There’s still
open doors in it, but I think it might be the right time to stop.
このセンテンスを読めば視聴者である我々が感じること全てを映画が説明している。

What did King Lear say?
"Blow, winds, and crack your cheeks! rage! blow!
You cataracts and hurricanoe."
Has the moment of her leaving come at last?
カーソンのこのセリフはシェイクスピアの四大悲劇の一つ『リア王』からリア王自身の心の中の狂気との戦いをもじって言葉で言い表せない悲しみをリア王の言葉になぞらえている。それはラストも近いシーンで．．．　　その意味するところは？

ところでダウントン・アビーの屋根を修繕する為に映画の撮影で使用するストーリーのくだりは、モデルとなった実在するハイクレア・カースルの屋根をこのドラマシリーズによって修繕費用を工面できたリアルな逸話からインスパイアされている。

何故？物語として登場人物が皆さん、万々歳すぎるハッピーなシナリオの羅列のような作品にしたかは、『新たなる時代へ』と言う題名が示すように結婚式に始まり、女性の髪形のパーマネントが流行り、また音楽の新しい波としてのジャズの存在や映画がサイレントからトーキーへと変わる過渡期を映すことで新しい時代の幕開けには必ず過去に対する別れである大きな悲しみも待っている事へのメタファーとしている。

でもこの映画がすべてがすべて喜べるものではなくて、映画としては避けては通れないエピソードも存在する。それは．．．
変態男でジュディ・ガーランドがまだローティーンの時に自分の愛人にし、さらに当時10才であったブラック大使の前でズボンを下したロリコン・オヤジ、アーサー・フリードが製作した『雨に歌えば』のメイン・プロットそのままを拝借している。フリードは変態オヤジのユダヤ人でもその才能は他を寄せ付けず『雨に歌えば』は、アメリカ映画協会（AFI）が発表したミュージカル映画ベストの第1位であるとともに、アメリカ映画主題歌ベスト100の第3位にもなっている。
多くの映画に出演しメインキャストにもかかわらず、映画ではオスカーを一度たりとも手にすることのなかったジーン・ケリーに晩年、この映画の功績によりオスカー名誉賞を受賞させてもいる。

そんなことを気にしなければ、すごく見易くて結構面白い映画となっている。『雨に歌えば』のエピソードを出した後では遅すぎましたか？　そこんとこ失礼いたしました。