ジェームズ・A・ミッチェナーの小説「南太平洋物語」をオスカー・ハマースタイン2世、リチャード・ロジャースとジョシュア・ローガンによりミュージカル化されて、ブロードウェイで驚異的なロング・ランをつづけた作品の映画化。今回の映画化では「エデンの東」のポール・オスボーンが脚色にあたり、「サヨナラ」のジョシュア・ローガンが監督、撮影は「無頼の群」のレオン・シャムロイ。音楽はリチャード・ロジャース。ハマースタイン作詞、ロジャース作曲の10数曲が演奏される。出演は「旅情」のロッサノ・ブラッツィ、「魅惑の巴里」のミッチー・ゲイナー、「お茶と同情」のジョン・カー、他にレイ・ウォルストン、フランス・ニューエン、ラス・モーガンら。製作バディ・アドラー。
南太平洋コメント(3)
太平洋戦争真っ只中の南太平洋のある島を舞台に、2組のカップルの恋模様を描く。
島に住む農園主のフランス人と従軍看護婦。こちらはしっとりと大人の恋。
ある任務を帯びて島にやって来た若い中尉と島の娘。こちらは若者らしく、情熱的に。
「愛する人が居てこその楽園。居なければただの島」
陽気そうな作風に思えて実は、年の差や各々の境遇、過去、事情…意外とシビアで悲恋的。
しかしながら、2時間半という長尺の中にたっぷり2組の恋や一応戦争映画らしい見せ場を織り込んでるものの、この当時のハリウッド・ミュージカルあるあるで話はそれほど深みは無い。
が、大規模ロケが行われたという南太平洋の島の風景やムードは最高。
楽曲も印象残り、メイン曲の“魅惑の宵”もいいが、南国ムード溢れる“バリハイ”と島の娘がキュートに指をパチパチさせる“ハッピー・トーク”が好き。
見た後も暫く、メロディーが耳から離れない。
話自体は平凡でも風景や楽曲は良かったのに、本作には一つ、残念な点が。
ミュージカル・シーンになると決まって画面が赤くなったり青くなったり黄色くなったり、カラー処理が施される。
よって、せっかくの美しく雄大な景色がおじゃんに。
“バリハイ”など、実景で見たかったのに…。
幻想的な演出を狙ったのかもしれないが、その実は一体どういう意図だったのだろう…??
美しい映像、美しい風景、美しい物語、美しい歌
何もかも最高です
舞台は赤道の少し南、パプアニューギニアの東方ソロモン諸島
まだ日本軍が優勢な頃の最前線の島
日米両軍の勢力が均衡して不思議な平和な日々の中での二組のラブロマンスの物語
そして終盤はなんとその日米の均衡を破る活躍が描かれます
それによって日本軍は総崩れとなり、米軍の本格的な反攻が始まるのです
もちろんガダルカナルの戦いのことを描いているのだと思います
この戦いこそ太平洋戦争の攻守が逆転した本当の天王山でした
つまり本作は南の島のラブロマンスのミュージカル映画だとばかり思っていたら、なんと本格的な戦争映画でもあったのです
そうした強いストーリーを下地にしているからこそ、その上に展開されるラブロマンスも力強く胸を打つのだと思います
圧倒的な色彩、歌のシーンの前になるとカラーフィルターがかかり青だの黄色だのの色彩に染まります
確かに不自然でそのままの美しい自然をバックにして歌のシーンで良かったのではと思います
しかし、その色彩の変化!
超有名な名曲バリハイのシーンの燃えるような赤い色彩と歌が終わって現れる青い海と空、そしてやがて赤く燃える夕焼けの対比!
またこれも有名なハッピートークでは手指の可愛い仕草だけでなく、黄色いフィルターの映像と水中の目の覚めるような深い青のコントラスト!
まるでトロピカルカクテルに酔ってくらくらするかのようです
歌のシーンだって劇のなかで突然はいるのは、ミュージカルに慣れない人なら不自然に感じるものです
ならばカラーフィルターが感情の演出として歌のシーンと共に入っても同じはず
本作のそれが流儀なんだと心得て見れば楽しめるものになります
ぜひポジティブに捉えて色彩を楽しんで頂きたいと思います
フランス人のロマンスグレーの素敵なおじさま役のロッサノ・ブラッツィは実はイタリア人
デヴィッド・リーン監督の旅情でもレディキラーでした
本当の恋愛はどんな障壁も乗り越えてしまうはず
命がかかったときそれを理解できるという物語でした
もう一つの悲恋で終わるラブロマンスの結末を知ってヒロインは自らの中の障壁を克服できたのでした
余韻も素晴らしく美しく、胸に残りました
暑い夏の夜に是非ご覧ください