トニー滝谷

7.2/10
合計21件のレビュー
ジャンル   プロット
ランタイム   76分
言語   日本語
地区   日本
劇場で   01月29日 2005
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トニー滝谷 プロット

孤独に生きてきた男が知った人を愛する喜びと人を失う切なさを描いたシンプルなラブストーリー。監督は「竜馬の妻とその夫と愛人」の市川準。村上春樹による同名短篇を基に、市川監督自身が脚色。撮影を、写真家の広川泰士が担当している。主演は、「みすゞ」のイッセー尾形と「父と暮せば」の宮沢りえ。第57回ロカルノ国際映画祭審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査委員賞受賞、第26回ぴあフィルムフェスティバル上映、サンダンス・フィルム・フェスティバル2005 ワールド・シネマ・ドラマティック・コンペティション ノミネート作品。

トニー滝谷 俳優

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トニー滝谷コメント(8)

kjxijhk
kjxijhk
父正三郎のシーンや、全編に渡るオフィスと小高い丘を上手くとらえた外の映像。孤独を表現するかのような坂本龍一のピアノのメロディ。これがトニーに内に潜む心理変化(孤独の時代と、幸福であっても孤独になったときの恐怖)に妙に合っていた。また、衣装部屋のブランド物で埋め尽くされた華やかさと、売り払った直後のがらんとした様子の対比。一瞬、独房で臥していた父正三郎のシーンをダブらせるところでは、座席の後ろから“孤独”という幽霊に抱きつかれたような奇妙な感覚に陥ってしまいました。75分という短い映画であるにもかかわらず、登場人物の心の波が押し寄せてくるとは、見事な映像表現でした。

原作も脚本も知らないのでわからないのですが、募集広告でやってくる久子(宮沢りえ二役)は妻英子と瓜二つだったのでしょうか?彼女を面接したときのリアクションから察すると、驚きの表情が全く感じられなかったのでそっくりじゃないと思ったのですが、もしそっくりだったのなら、ラストのシーンでのトニーの思いきった行動も若干違った心理になると思うのですが・・・

「2005年5月映画館にて」
ouitahe
ouitahe
村上文学に流れる当たり前だけど不思議な時間や空気がこの映画ではとてもよく表現されてると思う。
映画を見るというよりも、一つの村上春樹作品として楽しむべき。

眠たくなるけど、素敵な映画です。
vnuynm
vnuynm
「トニー滝谷の本当の名前は、本当にトニー滝谷だった」。西島秀俊のナレーションがこの原作の書き出しを作品内に響かせる時、一瞬にして透明感に満ちた世界が広がった。単なる純粋無垢な透明でなく、どこかひんやりと冷たさが残る、青みがかった白。個人的に原作からは灰色の世界をイメージしていたところがあったので、この色彩は逆に鮮烈だった。出演者は最小限。むしろ言葉と音楽と、人と舞台との親密なセッションを見ているかのようなところがある。ここで舞台と書いたのは、本作が実際の建築物ではなく、丘の上に設営されたセットで撮影されているから。窓の外に余計なビルなどが写りこまず、自然光を十分に取り入れるためのものだ。市川準監督はここまでして世界観を作りこまないと村上文学のあの唯一無二の特殊さは表現できないと考えたとのこと。ただ、ラストは少しだけ変わっている。この映画には監督の優しさと慈愛が滲み出ている。そんな気がした。
Simkopnhsgx
Simkopnhsgx
村上春樹小説の魅力である、ユーモアとリズム感と自己の俯瞰的視点。
それらを見事に、スマートに、原作への敬意を持って映像化することに成功している。

ナレーションとセリフをリンクさせる演出や、同じ屋外でセットを作り替えるだけの風通しの良い画、イッセー尾形と宮沢りえの乾いた存在感など、村上小説を読んでいるかのような観劇感である。
Npxgismksoh
Npxgismksoh
市川準監督の『トニー滝谷』を観た。観るのはこれで恐らく三度目になる。七十分ほどの小品だが、その分細部まで細かく作られているという印象を受ける。私はかつて村上春樹氏のファンだったことがあるので原作となる短編小説「トニー滝谷」も読んでいたのだけれど、それでもなおこの映画化に関しては「失敗作」「駄作」という印象は感じなかった。手放しで褒められるほどの出来か、と言われれば返答に困ってしまうのだけれど、少なくともつまらなくはない。村上春樹氏の上品な世界を卒なく映画化しているな、という印象を感じさせられたのだった。

スジを改めて荒く紹介するなら次のようになる。終戦直後に生まれた主人公は、父親の滝谷省三郎と親交が深いアメリカ将校によってトニー滝谷という名前をつけられる。その風変わりな名前によって孤独な少年時代を過ごし、青年になってから後にイラストレーターとして活躍することになる。彼は相変わらず孤独を愛好する大人として育つのだが、運命的な女性との出会いを果たして結婚することになる。しかし、彼女は病的なまでに洋服を買い漁る悪癖を備えていた。トニー滝谷はその買い物依存症を窘めるが、ある日彼女は自動車事故で亡くなる。トニー滝谷はその心の空白を埋めるべく、妻と同じ体型のアシスタントを雇い妻の服を着ることを条件として働かせる……これがプロットである。

改めて観直してみたのだけれど、やはりイッセー尾形氏の演技が冴えていると言えるだろう。良い意味でも悪い意味でもアクのない、マッチョらしからぬ(村上春樹作品特有の)男の主人公を巧みに演じていると思う。それでいて繊細に過ぎるというところもない、イッセー尾形氏らしい存在感を湛えている。役を食っているというか、原作の雰囲気を台無しにすることなく、しかしそこはやはりイッセー尾形氏らしい演技で魅せるのだ。大した起伏のあるスジではないが故に、その「何処を切ってもイッセー尾形」という安定した演技はなかなかのものと思わされる。

しかし、やっぱりこの映画を支えているのは宮沢りえ氏ではないかと思う。今回改めて観直してみて彼女がひとり二役という非常に難しい演技に挑み、要求されているハードルをクリアしていることに驚かされるのだ。初見の時はなんの予備知識もなかったため別人だと思っていたということは以前にも書いたが、今回観直してみても同一人物だとはなかなか信じ難い。役割をドラスティックに変えているというのではないのだけれど、それでも二面性が巧く引き出されているように感じさせられる。これは監督の腕に拠るものなのだろうか?

私は映画をどうしても「スジ」からしか語れない弱みを備えているので、次々と紙芝居のように場面が転換して行くこの映画特有の語り口についてはなにも語れないのだった。だから結局はこの映画をどう解釈するかという方向に話が向かってしまうのだけれど、この映画は(他の村上春樹作品と同様に)「孤独」であることをどう描いた作品なのかというところに行き着くのではないかな、と思うのだ。トニー滝谷は孤独な人物として生きて来て、妻との出会いにより「孤独」であることからは逃れられる。だが妻の事故死によりまた「孤独」であることを強いられる。その「孤独」を際立たせるものとして妻が残して行った夥しい数の服が描かれるのではないかと思うのだ。誰からも着られることのない衣服。これほど存在価値を失った「孤独」を象徴するものもない。

若干ネタを割るが、アシスタントとして雇った女性も解雇されてしまい、父親の滝谷省三郎とも死別してしまう。あとに残されたカビ臭いヴィンテージもののレコードを売り払うと、今度こそトニー滝谷は独りぼっちになってしまう。その途方もない空虚感が、この映画の鑑賞後の気分を重くさせる。明確な希望が描かれるわけではなく、絶望というものも描かれない。まさにどっちつかず……という印象で、解釈はこちらに委ねられている。余韻の重さは只者ではない。「孤独」から始まった物語は「孤独」で終わる。円環……というわけでもないにせよ、喪失感だけがこちらに残るエンディングとして成立しているのではないかと思う。

村上春樹作品の映画化は非常に難しい。これほどまでに国民的なベストセラー作家として読まれていながらも、恐らくは村上春樹氏が了承しないからなのであるだろうけど、そもそも作品が映画化されるということも非常に珍しい。私が観た範囲でそれでも辛うじて成功していると感じさせられるのはトラン・アン・ユン『ノルウェイの森』ぐらいだろうか。そして、この『トニー滝谷』もまたその「成功」した部類に入るのではないかと思う。過小評価されていることがもったいなく思われる一作だ。この作品をハルキストだけに独占させるのはこれもまたもったいない。坂本龍一氏のミニマルな音楽も相俟って、小ぶりだがなかなか魅せる作品として結実していると思う。