1970年代後半のイギリスで、音楽を通して人種差別撤廃を主張し続けた若者たちによるムーブメント「ロック・アゲインスト・レイシズム」に迫ったドキュメンタリー。経済が破綻状態にあった当時のイギリス。国民の不安と不満は、第2次世界大戦後に増加した移民たちへと転嫁され、イギリス国民戦線を中心とする過激な排外主義運動が高まっていた。街に暴力があふれかえる中、芸術家のレッド・ソーンダズら数人の若者たちが、人種差別に対してロックで対抗する組織「ロック・アゲインスト・レイシズム」を発足。彼らの発信するメッセージは、ザ・クラッシュ、スティール・パルスなどのパンクやレゲエ音楽と結びつき、多くの若者たちに支持されていく。監督は、BBCでドキュメンタリーを手がけてきたルビカ・シャー。
白い暴動コメント(16)
トーキョー・ロックダウン前夜に、このパンクなドキュメンタリーを観てきましたよ!
70年代に英国で台頭した移民に対する排外主義。ナショナルフロント(以下NF)というヘイト政党が支持され始めていました。ロック界でもエリック・クラプトンが支持を表明。
(ボウイも「ファシストが必要」みたいな発言してましたが、ヤツはファッションで適当なこと言う癖あるから、個人的にはガチかは不明)
そんな中、ロック・アゲンスト・レイシズム(以下RAR)という団体が立ち上がり、パンクやレゲエといった音楽でヘイトに闘いを挑みます。本作はその軌跡を描いたドキュメンタリーです。
もうね、NF支持者は現在のヘイト連中とまったく同じ。経済の先行き不安が強まると、不安に耐えられない人たちがダークサイドに堕ちていき、ガチのヘイト狂信者に煽られてその勢力と危険性を増していく。めちゃくちゃ既視感がありました。
ヘイト軍団は「スキネッズ」と言われるスキンヘッドにしたグループに属していることが多いようでした。共通ファッションで連帯感を高めている点は、現在のネット右翼どもとは毛色が違うように感じました。モッズとかテディボーイズとか、イギリスは自分の所属するトライブでファッションを合わせる傾向があるのかも。
あと、警察は絶対に排外主義を支持しますね。とにかくポリどもは市民の異議申し立てに対して抑圧する性質があるのでしょう。まぁ権力に深く考えずに従うタイプの人じゃないと務まらない仕事なのかもしれません。
そんな連中にRARは音楽やアートで対抗します。特に音楽はちょうど台頭してきたパンクや、イギリスに渡ってきた黒人たちのレゲエが呼応していき、運動が徐々に大きくなっていきます。
RARは結構暴力を振るわれます。アクティビストのすごいところは、ちゃんと暴力を乗り越えていくところですね。屈服しないですから。
圧巻はラストの反ヘイトを掲げた10万人のデモ行進&屋外ライブ!我らがクラッシュやトム・ロビンソンバンドといった反ヘイトバンドだけでなく、NFにも支持されていたシャム69も参戦!俺もシャム69は右翼バンドだと思い込んでいたけど、彼らは労働者階級の代弁者的なバンドで、RARにも理解を示していました。
そして大ラスに鎮座するクラッシュの『白い暴動』のカッコ良さといったら!シビれた!シビれて死んだ!そして蘇生した!最高ですわクラッシュ!マジでカッコよかった。シャム69のフロントマン、ジミー・パーシーも共演していて、それも熱かった!
以前、「フジロックに政治を持ち込むな」という声が上がり、ちょっと炎上したことがありました。これは現在日本で起きていること考えると、さもありなんと感じます。
結局我々はポップカルチャーを政治と切り離して楽しんだ結果、政治がリアルから遠のき、リアルじゃねえ連中に政治を任せることになっているのかもしれません。
どうやら現段階では、ミニシアターの補償はされない様子。このような政府を作ったのは、政治という生臭いものをポップから遠ざけ、闘争から逃げた我々の責任だと思っています。
とは言え、当初外されていたセックスワーカーへの支援が再考されたりと、声を上げることで変化は起き得ると思います。また、やがて来たる選挙で、よりマシな動きをした政党に投票することもできます。これから映画館文化を守るための動きも出てくると思いますし、実際アップリンクはアップリンククラウドで寄付プランも立ち上げています。そういう動きに参加するのもポップ政治活動だと思います。
現在のような危機的状況は、古い価値観が死に、気づかれなかった価値観が再生するチャンスでもあると思います。多くの人たちが(自分も含め)、より意味ある生き方を模索する変化の時期に差し掛かっているのかもしれません。それぞれの闘いから目を逸らさない生き方ができると、世界はもう少しマシになるかも!
白い暴動
俺は暴動を起こしたい
白い暴動
俺たちの暴動を
The Clash "White Riot"
2020年のアメリカで今、起こってることとさほど変わらない。
人は成長しないものなんだなあ。虚しい。
知らなかった1970年代のイギリスにタイムスリップして、パンクやファッションを楽しむつもりでいたが、思った以上に切実な現実を見せつけられた。
肌の色は同じ白人同士でも労働 者階級と富裕層との格差がこんなにあったんだなと知る。
RARは、SNSのない時代、紙の印刷物を町じゅうに貼りまくる。黒に赤でレイアウトもがかっこいい。
バッチもかっこいい。
活動家ってもっとダサいイメージだったけどスタイリッシュだな。
クラッシュとシャム69がめちゃくちゃかっこいい!
音楽の力は人種を超えて人を繋いでゆく。
10万人も集まったライブの映像は圧巻。
こんなパワーを現代にももう一度蘇らせて欲しいなと感じた。
ロック・アゲンスト・レイシズム運動があったなんて知らなかったし、フレディ・マーキュリーが「パキ」って罵られていた時代背景もよく理解できた。
クラッシュが大観衆に向かって登場するシーンはやっぱり興奮した。
ボブ・マーリーは「Punky Reggae Party」って、デトロイトの黒人三兄弟はパンク・バンド"DEATH"をハードコア・パンクでは"Bad Brains"だって黒人だゼェ。
初期PUNK、イギリスのバンドは自己満足で網羅していたつもりが、アジア系の"エイリアン・カルチャー"は知らなんだ!??
スージー・スー含め、シド・ヴィシャスの“卍"は彼の愛嬌やキャラでは済まされない現実があり、ジョニー・ロットンも右派に集団リンチな有様。
公園に十万人の異様な風景の中に"The Clash"が登場し「白い暴動」をジミー・パーシーも入り乱れる最高なシーンはYouTubeでも見られるが、スクリーンで観る迫力がある。
バンドを目的で観ると物足りなさはあるが、イギリスに於けるPUNKって音楽ジャンルは社会的な問題が根強くある訳で、ファッションパンクはやはり死ぬベシ!!
国民戦線"NF"や"ブリティッシュ・ムーブメント"に音楽が絡んだ人種差別問題を描いた本作に「THIS IS ENGLAND」と「ダリル・デイヴィス KKKと友情を築いた黒人ミュージシャン」を合わせて観るのも良い。