女相続人 プロット

「ミニヴァー夫人」「我等の生涯の最良の年」のウィリアム・ワイラーがパラマウントに入社しての第1回製作・監督に当たったもので、19世紀の心理小説家ヘンリー・ジェームズの小説『ワシントン街』より、ルース及オーガスタス・ゲーツが戯曲化した「女相続人」に取材、劇作者が映画用に脚本を書き改めている。撮影は「蛇の穴」のレオ・トーヴァー、音楽は「我等の町」のアーロン・コープランド(アカデミー音楽賞)。出演者は「遥かなる我が子」に次ぎ、再度アカデミー賞を獲得したオリヴィア・デ・ハヴィランド、「捜索」のモンゴメリイ・クリフト、「堕ちた偶像」のラルフ・リチャードソン、「旧友」のミリアム・ホプキンスのほか、「恋文騒動」のモナ・フリーマン、「ボストン物語」のヴァネッサ・ブラウン、「サンマー・ホリデイ」のセレナ・ロイル等である。

女相続人 俳優

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女相続人コメント(2)

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これまで観てきたワイラー監督作品の中で「探偵物語」に並んでベストに挙げたい傑作。
19世紀半ばのニューヨークを舞台にした、富豪のひとり娘に言い寄る唯一の若者との愛憎を描いた男女の心理劇。主演のオリビア・デ・ハヴィランドは、女性の魅力を持ち合わせていない醜女の設定が映画の建前になっている難しい役柄を演技力で乗り切っている。不幸を背負う女性の疎外感と無教養故の鈍感さの表現が上手い。「風と共に去りぬ」のメラニーの淑やかな美しさとは対極にある女性像である。対するモンゴメリー・クリフトは、打算的で女性のこころを操る遊び人の厭らしさを隠した男の悪徳振りを演じる。これもクリフトには珍しい役柄なので、まずこの配役とワイラー監督の演出力の素晴らしさに唸ることになる。出産で命を落とした妻を忘れられず、その美しさを受け継げなかった実の娘に、本来あるべき親の愛情を持って接することが出来ない、これも不幸な父役をラルフ・リチャードソンが冷徹に演じ切っている。救いは、デ・ハヴィランドに寄り添う叔母役のミリアム・ホプキンスの存在。映画は、この4人の登場人物で展開する舞台劇が基になっている。最初のダンスパーティーに出掛ける外出シーン以外は、殆ど主人公の住む屋敷の中で繰り広げられる会話劇が最後まで続くが、それでも全く飽きさせない。脚本と演出が充実した愛憎心理劇の見事さと面白さ。特にラストの復讐の人となったデ・ハヴィランドが、女の怖さ見せ付けるクライマックスは名シーンと言っていい。親の愛情に包まれる幼少期が、如何に人間の成長において大切である事か。女性にとって過度なファザーコンプレックスも問題だが、男として尊敬できない父親に育てられた女性の男性に対する免疫力の低さも、この作品で改めて考え至ることになる。
父が亡くなった後、再び言い寄るクリフトに、もう騙されないと意を決した主人公が言う台詞が凄い。”最初は財産目当てだったのに、今度は私の心まで欲しがるとは何と欲深い男”と、叔母に吐き捨てるように言うのだった。人の心理を読めるというより、人間(男)不信に陥った主人公は、もう普通の恋愛が出来ない、否しようとも思わない女性になってしまった結末だった。女と男の探求には欠かせない傑作の一本である。
1996年 6月5日
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①主要キャストは4人だけなのに何と濃密な演技合戦。モンゴメリー・クリフトが珍しく色悪な役。オリビア・ディ・ハビランドも世間知らずのオールドミスが心を閉ざした冷徹な女に変わっていく姿を熱演。②ウィリアム・ワイラーの人間を凝視する演出は揺るぎがない。